【赤坂女性殺人未遂事件】犯行は否認…それでも追送検までされた犯人を追いつめる証拠の“包囲網”

「私はやっていません」 東京・赤坂のライブハウスの前で40代女性を刺し、重傷を負わせたとして、警視庁に殺人未遂容疑で逮捕された男は容疑を否認し、その後、黙秘を続けているという。 「12月12日、東京地検は、女性を刃物で刺して殺害しようとしたとして、陸上自衛隊朝霞駐屯地所属の2等陸曹・大津陽一郎被告(43)を殺人未遂罪で東京地裁に起訴しました。 警視庁が朝霞駐屯地を捜索したところ、大津被告の個人ロッカーから血が付いた青色の作業着が見つかったということです。そのDNA型鑑定をしたところ、被害者女性の血痕とみて『矛盾なし』という結果だったといいます。現場周辺の防犯カメラには、押収した作業着と似た服装の人物が映っていました。 大津被告は’00年3月、陸上自衛隊に入隊し、’24年3月から朝霞駐屯地第1施設大隊で重機などの機材維持や管理を担当。事件後も通常通り勤務していたということです」(全国紙社会部記者) 事件が起きたのは11月16日のことだった。 午前10時半ごろ、大津被告は赤坂の地下1階にあるライブハウスの前で、ライブに出演予定だった40代女性の左脇腹や左の手のひらを刃物で刺し、殺害しようとしたとみられている。犯行の約5分後、ライブハウスの関係者が「男に人が刺された」と110番通報したことから事件が発覚した。女性は傷が内臓まで達する重傷だったが、生命の危機は脱したという。 「大津被告の自宅から、被害女性と2人で撮られた写真が押収されました。数年前に撮影されたもので、飲食店でどちらかの誕生日を祝っているような写真だということです。警視庁は、写真が2人の交際関係を示す物証とみています。 大津被告は、取り調べのなかで、『女性とは9年くらい前にSNSで知り合い、妻子がいることを隠して交際していました。女性から別れを切り出されて円満に別れ、トラブルはありません』と供述したということです」(前出・社会部記者) 冒頭のように犯行を否認し、事件当日、「赤坂には行ってない」とまで主張している大津被告。しかし、各所に設置された防犯カメラは大津被告と思われる男性の姿を捉えていた。そして警視庁が約130台の防犯カメラの映像を解析した結果、事件当日の動きがわかってきたという。そこには、16日の午前6時半ごろに自転車で駐屯地を出発した大津被告とみられる男性が、捜査を撹乱させるためか、服装やマスクを替えながら、駐屯地と赤坂、往復約40キロを走っている姿が映っていた。 ◆意味がなかった数々の“偽装工作” 前出の社会部記者が解説する。 「事件発生の約2時間前には、現場付近の防犯カメラに黒色の帽子に白いマスク、黒っぽい服を着た男が現場付近をうろつく姿や、ビル1階に貼ってあるポスターの前に立っている姿が映っています。そして被害女性がビルに入った直後、この男が同じビルに入り、その後、走って出てくると、自転車に乗って逃走する姿が映っていました。足跡を残さないためか、靴はポリ袋のようなもので覆われていました。 大津被告は、赤坂に向かうために駐屯地を出たときには、青っぽい服で黒いマスクをつけていました。犯行前に黒っぽい服に白いマスクに着替えて犯行後、青山方面に自転車で向かい、練馬区を経て和光市に入ったあたりで、服は青っぽい色に変わり、マスクも白から黒に変わっていました。 大津被告の自宅からは、防犯カメラに映っていたものと似た自転車が見つかっていますが、サドルの色が、映像のものとは違っていたということです」 服装を替えたりすることで、どの程度、捜査を撹乱できたのだろうか。 元神奈川県警刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「いくらなんでも、現代の科学捜査を舐めすぎですよ」と、やや呆れながら解説する。 「Nシステムに引っかからないように自転車を使ったのかもしれませんが、あれだけ防犯カメラに映っていれば、まったく意味がないですよ。 SSBC(捜査支援分析センター)による防犯カメラ捜査は、単に服の色を見るのではなく、骨格や歩き方(歩容認証)、顔認証、全体のシルエットなどで判断するため、服を替えた程度ではごまかせません。自転車の漕ぎ方だって、ひとそれぞれ違います。天下のSSBCが服装の色で犯人を追っているとでも思っていたんでしょうか。午前中の赤坂なんてほとんど人がいないのに、あんな大男が2時間もうろうろしたりとか、なんとも浅はかですよ。 唯一、裏をかいたのは朝霞から自転車で来たことでしょうね。『えっ、朝霞から赤坂まで自転車?』と捜査員も驚いたでしょう。その体力と行動力だけは、さすが自衛官だなと思いました。それ以外は、本当に稚拙な犯行だといえます」 警視庁は12月17日、大津被告を、ライブハウスの出入り口に設置された看板にスプレーでバツ印を書いたとして、器物損壊の疑いで追送検した。駐屯地への家宅捜索で、大津被告が看板に吹きかけたものと同じ成分のスプレーが見つかったという。 次々と出てくる証拠は、やはり、大津被告が犯人であることを示しているのか。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit 取材・文:中平良

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