<1年を振り返って2025>三重県知事選 一見氏、圧勝で再選 問われる「見える成果」

任期満了(9月12日)に伴う三重県知事選(同7日投開票)では、現職の一見勝之氏(62)=無所属=が元四日市市議で新人の伊藤昌志氏(55)=同=と建設会社社長で新人の石川剛氏(52)=共産支持=を破って再選。2期目のスタートを切った。 自民、立民、国民、公明の各党に加え、100を超える商工団体などの推薦を受ける盤石の体制で選挙に臨んだ一見氏。県議や市町長らの多くが支援に駆け付けた。結果は次点に約20万票の大差を付ける圧勝だった。 選挙戦では、津波避難タワーの整備や人口減少対策方針の策定など、1期目の実績を強調。米国との関税交渉に当たった赤澤亮正経産相との親密さを紹介するなど、元官僚として「国とのパイプ」もアピールした。 一方、既存政党による「相乗り」や「オール与党」とも呼べる構図に対し、多方面から「盛り上がりがない」との声が聞かれた。投票率は39.77%。前回を1.84ポイント上回るも、前回に次いで過去3番目に低かった。 さらに、一見氏の得票率は前回選挙に比べて低下した。前回と同じ三つどもえの構図だったが、得票率は前回比6ポイント減の65.5%。一般的に2期目を目指す現職の選挙戦は有利とされるが、約2万5千票を減らした。 就任後は「性暴力の根絶をめざす条例」を制定。10月には、カスタマーハラスメントを防ぐ条例に罰則を盛り込むと表明した。罰則付きの同条例は「全国初」とされ、多くのメディアが全国ニュースで取り上げた。 今後は「南海トラフ地震特別措置条例」や「部落差別解消条例」(共に仮称)の制定に意欲を示す。ジェンダーギャップの解消やインバウンド(訪日客)の誘致など、多分野で計画や戦略を策定する方針も掲げる。 一方、そろそろ問われそうなのが「見える成果」だが、今のところは各種計画の策定が目立つ。10月の県議会一般質問では、議員が「計画の策定が目的化していないか」「計画が屋上屋となっていないか」と指摘した。 職員の相次ぐ不祥事にも悩まされている。企業庁発注工事を巡る贈収賄事件をはじめ、1期目も不祥事への対応に追われたが、2期目に入った後も現金着服などの不祥事が相次いで発覚。不適切な事務処理も目立つ。 本年度に入って懲戒処分を受けた職員は12人。前年度の2人を大幅に上回り、過去5年で最多となった。今月10日には、宿泊施設で女性を羽交い締めにしたとして、県土整備部の男性主査(45)が暴行容疑で逮捕された。 ただ、目立った対策と言えば、コンプライアンス推進会議に民間など外部のメンバーを加えるぐらい。不適切な事務処理の背景とされる「業務負担」も軽減する方針だが、その成果が出るには時間がかかりそうだ。 足元の〝揺らぎ〟は政策の遂行を妨げる足かせになりかねない。庁内では刷新感の乏しさを指摘する声も上がる。県の課題解決につながる成果に加え、足元の立て直しに向けた対応も注力される2期目となりそうだ。

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