「やっと逮捕」憤る被害者 トケマッチ、当初から換金目的か 高額物品寄託のリスク指摘も

「トケマッチ」の運営会社元代表、福原敬済容疑者(44)の逮捕を受け、被害者の1人は「やっと逮捕された。被害者への補償をしてほしい」と憤りをあらわにした。全国約650人が、預託名目で高級腕時計をだまし取られた事件。モノやサービスを共有するシェアリングサービスは近年市場規模を拡大しているが、専門家は、高額物品を預けるリスクは大きいと指摘する。 ■初めて買った時計で被害 相模原市の30代の会社員男性は、令和5年12月、約100万円で購入したロレックスの腕時計をトケマッチに預けた。「預託料として毎月3万5千円を支払う」「腕時計は期間終了後に返却する」-。あまりにうまい話に違和感を覚えたものの、3年近い営業実績のある同社について「悪い噂は聞かなかった」ことから、時計を預けることに。ところがその約1カ月後、会社は解散とサービスの終了を発表した。 トケマッチを巡っては全国で、「預けた腕時計が返却されない」という被害届の提出が相次いでいた。男性は、被害者でつくるSNSのコミュニティーに参加。会社側から損害賠償金は支払われたが、「初めて買った」という思い入れがある時計はいまだ手元に戻ってきていない。「残念。何があったのか明らかにしてほしい」と訴える。 ■解散直前まで募集続ける 捜査関係者によると、福原容疑者らは雑誌広告やテレビコマーシャルなどを通して、「安定した収入が得られる」などと大々的に宣伝して預託者を募集する一方、売り上げにつながる「借り手」の確保には消極的だった。法人解散の直前まで、通販サイトのギフト券のプレゼントキャンペーンを展開して預託者の募集を続け、預かった腕時計を質屋や買い取り業者で換金しており、捜査幹部は「資金繰りに苦慮したのではなく、当初から換金をもくろんだ詐欺事件だった」とみる。 不要品の有効活用や、収入源の確保の手段として人気を集めるシェアリングサービス。「シェアリングエコノミー協会」によると、国内の市場規模は平成30年度の約1兆9千億円から、令和6年度は約3兆円に拡大している。 ただ、預けた物品が返還されないなど、トラブルに発展するリスクもある。シェアリングサービスに詳しい落合孝文弁護士は「シェアの対象は車などのモノから、人材派遣などサービスまで多岐にわたる。高級腕時計のような高額物品を預ける際のリスクは高く、規制を含めた議論も選択肢の一つではないか」と警鐘を鳴らす。(海野慎介)

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