韓国の検察は13日、非常戒厳を宣言して内乱を首謀した罪などに問われている尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領(65)の裁判で、死刑を求刑した。 尹氏の罪状は、2024年12月に軍事力を使って国を支配しようとした行為に基づいている。尹氏のこの行動は数時間しか続かなかったが、国政の大混乱を招いた。 尹氏はのちに国会で弾劾され、裁判のため拘束された。 裁判で検察は、前大統領による非常戒厳の動きで死者こそ出なかったものの、その意図は暴力的だったと主張してきた。 これに対し尹氏は、世間の注目を野党の不正に向けるために、象徴的な行為として非常戒厳を出したのだと主張。無罪を訴えている。 尹氏に対する罪状の中では、内乱を首謀した罪が最も重い。韓国の法律では、この罪には死刑か無期懲役が科されることになっており、検察はどちらかを求刑することになっていた。 韓国では死刑は30年近く執行されていない。1996年には、1979年の軍事クーデターで権力を掌握した、独裁的な全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領に死刑が言い渡されたが、のちに無期懲役に減刑された。 裁判所は2月に判決を言い渡す見通し。韓国では、検察の求刑が常に支持されるわけではない。 ■「権力欲」からの行動と検察 この日、ソウル中央地裁であった論告求刑公判では、検察が尹氏について、「独裁と長期支配を狙った権力欲」に突き動かされていたと主張した。 そして、「この事件の暴動における最大の犠牲者は、この国の国民だ」と述べ、「量刑で酌量すべき事情はなく、厳罰が科されなければならない」とした。 検察はこれまでの裁判で、軍司令官を証人として呼び、尹氏がクーデターに失敗した際に、国会議員の逮捕を命じていたとの証言を引き出した。 また、非常戒厳の立案者の1人だった元軍人が作成したメモを証拠として提出。そこには、ジャーナリスト、労働運動家、議員ら数百人の「処分」を示唆する内容が記されていた。 尹氏はこの日、法廷で検察の論告を聞いた。これまでの裁判では、非常戒厳は大統領権限の範囲内だと主張。韓国・聯合ニュースによると、「国家を破滅させる邪悪」に対抗するため非常戒厳を宣言したと主張した。 尹氏の裁判は、尹政権の金龍顕(キム・ヨンヒョン)国防相と趙志浩(チョ・ジホ)警察庁長官(いずれも当時)の裁判と統合された。 検察は、尹氏の違法な命令を実行したとして、金氏に無期懲役、趙氏に懲役20年を求刑した。他にも被告が5人いる。 尹氏は昨年4月に大統領を罷免され、韓国の現職大統領として初めて身柄を拘束された。複数の刑事裁判で被告とされており、昨年7月の再逮捕以降、拘束は何カ月も続いている。先月は、公務執行妨害罪や非常戒厳の試みに関連した罪の裁判で、検察は尹氏に懲役10年を求刑した。 尹氏は大統領だった2024年12月3日、韓国全土に非常戒厳を宣言。国内外に衝撃を与えた。当時、尹氏は、北朝鮮の共産主義勢力から国を守るためだと主張。だが、国内政治の苦境の中で権力を掌握し続けるための策略だとの見る向きもあった。 尹氏の弾劾を受けて昨年6月に大統領選が実施され、現在の李在明(イ・ジェミョン)大統領が選出された。 尹氏は失脚したものの、右派勢力などに忠実な支持者は今も残る。そうした人たちは尹氏を、李氏が率いるリベラルな「共に民主党」に敢然と立ち向かった殉教者とみている。 (英語記事 Prosecutors seek death penalty for ex-South Korean president Yoon)