ローラ・ビッカー(北京)、スランジャナ・テワリ(シンガポール)、コーユー(シンガポール)、ジェシカ・マーフィー(トロント) 中国の習近平国家主席とカナダのマーク・カーニー首相は16日、中国・北京で会談し、両国が互いに課している関税を引き下げることで合意した。ここ数年冷え込んでいた両国関係を、再構築していく兆しが見える会談となった。 中国はカナダ産キャノーラ油に課している関税を、3月1日までに現在の85%から15%へ引き下げる見通し。一方でカナダは、中国製電気自動車に対し、最恵国待遇の税率6.1%を適用することに合意したと、カーニー首相は記者団に説明した。 今回の合意は、カナダと中国の長年にわたる緊張関係と報復関税の応酬に終止符を打つ画期的なもの。習主席は両国関係の「転換」を称賛した。カナダの首脳として約10年ぶりに中国を訪れたカーニー氏にとっても、勝利と呼べるものになった。 カーニー氏は、カナダの最大の貿易相手国アメリカへの依存度を下げ、貿易の多角化を図ろうとしている。ドナルド・トランプ米大統領が税率を二転三転させ、不確実性が生じていることを受けた対応だ。 今回の合意により、中国のカナダへの投資が増える可能性も出てきた。 カーニー氏自身、トランプ氏の関税措置が今回の動きを招いたとほのめかしているようだった。アメリカの主要な同盟国の一つは今や、アメリカの最大の競争相手・中国へと傾いている。 カーニー氏は記者団に対し、ここ数カ月の間にカナダと中国の関係は以前より「予測可能」なものになったとし、中国政府との協議は「現実的で敬意あるものだった」と述べた。 カーニー氏は、カナダ政府は中国とすべての点で一致しているわけではないとも強調。習氏との会談では、人権問題や選挙介入への懸念、「ガードレール」を設ける必要性など、カナダ側の「レッドライン」(越えてはならない一線)を明確に伝えたとした。 中国の人権問題について問われると、カーニー氏は「私たちは世界を、自分たちが望む姿ではなく、あるがままに受け止める」と答えた。 複数の観測筋は、カーニー氏の訪中が、アメリカによる関税措置で苦しむほかの国々にとっての、一つの例になるかもしれないと見ている。 対照的に習主席は、中国が安定した国際パートナーだと示そうとしている。より現実的な関係、つまり、中国政府の言葉を借りるなら「ウィンウィン」の関係を求めている。 その取り組みは奏功しているようだ。ここ数週間の間に、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領やアイルランドのミホル・マーティン首相が北京を訪れている。イギリスのキア・スターマー首相やドイツのフリードリッヒ・メルツ首相も、近く訪中する予定だ。 カーニー氏は「世界は劇的に変わった」としたうえで、カナダが自分たちの位置をどう定めるかが「今後数十年の未来を形作るだろう」と語った。 3日間の日程で中国を訪れたカーニー氏は、カナダと中国のパートナーシップが両国を「新しい世界秩序」へと導くことになると、会談を前に述べていた。その後、多国間システムは「控えめに言っても侵食あるいは弱体化している」とも述べた。 北京の人民大会堂に両国の代表団が集まる中、習氏は、「中国とカナダの健全かつ安定した関係の発展は、世界の平和や安定、発展、繁栄に資する」と述べた。 ■貿易関係をリセット カナダと中国の交渉の行き詰まりの大きな原因は、関税をめぐる問題だった。 2024年にカナダは、中国製電気自動車に100%の関税を課した。アメリカも先に、同様の措置を取っていた。 これを受け、中国は昨年、キャノーラ種子や油など20億ドル超相当のカナダの農産物に報復関税を課した。その結果、2025年のカナダの対中輸出は10%減少した。 16日の合意では、カナダは中国製電気自動車について、年間4万9000台まで、最恵国待遇の税率6.1%を適用することになる。 この台数の上限は、手ごろな価格の中国製電気自動車の流入を懸念するカナダの自動車メーカーに配慮したものだ。 キャノーラ生産者への救済措置に加え、カナダ産ロブスターやカニ、エンドウ豆に対する関税も引き下げられる。 中国はカナダにとってアメリカに次ぐ第2の貿易相手国だが、その取引量は対米取引には大きく及ばない。 カーニー氏にとって、中国との経済関係はますます重要なものになっている。14日に北京入りすると、カーニー氏は電気自動車用バッテリーメーカーやエネルギー大手など、中国の有名企業の幹部らと面会した。 15日には、カナダと中国が、エネルギー・貿易協力に関する複数の協定に署名した。 カナダの元外交官でカナダ国際問題研究所副所長のコリン・ロバートソン氏は、今回の訪問は「関係のリセット」だと指摘。「野心は控えめ」かもしれないが、「我々が合理的に得ることができるものについては、はるかに現実的」なものだったとした。 ■冷え込んだ歴史 カナダの首相が中国を訪れたのは、2017年に北京で習氏と会談したジャスティン・トルドー氏以来。 カナダと中国の関係は、翌2018年に悪化した。カナダ当局が、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)創業者の娘で同社最高財務責任者(CFO)兼副会長の孟晩舟氏をカナダ西部ヴァンクーヴァーで逮捕したためだった。逮捕は米警察当局からの要請を受けてのことだった。 この数日後、中国はカナダの元外交官マイケル・コヴリグ氏と実業家のマイケル・スパヴァー氏をスパイ容疑で逮捕・起訴した。孟氏が逮捕されたことへの報復措置だとの批判が上がったが、中国はこれを否定した。 2021年、孟氏は米司法省との司法取引に応じ、釈放された。中国で拘束されていたコヴリグ氏、スパヴァー氏も解放された。 カーニー氏と習氏の会談に先立ち、コヴリグ氏は、今回の訪中では両国の関係改善だけでなく「影響力の管理」も狙うべきだと、ソーシャルメディアに投稿した。 コヴリグ氏は、中国の交渉担当者は「非常に巧みで計算高く、常に影響力を探している」と指摘。「だからこそ、規律を持って臨まなければならない」とした。また、カーニー氏は中国で拘束されているカナダ人のために働きかけるべきだと付け加えた。中国で拘束されているカナダ人は約100人にのぼると、カナダメディアは伝えている。 カーニー氏は記者団に対し、同じ価値観を共有しない国とは「より限定的かつ具体的な」かたちで関わっていくことを明らかにした。 「我々が協力する部分と、意見が異なる部分は非常に明確だ」とカーニー氏は述べ、中国が主張する台湾の自治権や、収監されている香港の民主化活動家で実業家の黎智英(ジミー・ライ)氏についても、「幅広い議論」の中で取り上げられたと付け加えた。 カーニー氏は、カナダと中国は「異なる制度」を持っているため、両国が協力できる範囲には限界があると述べた。 「それでも、効果的な関係を築くために、我々は直接対話する。拡声器を使って話し合うようなことはしない」 (英語記事 China and Canada announce tariffs relief after a high-stakes meeting between Carney and Xi)