米司法省、移民当局ICE妨害の疑いでミネソタ州知事ら民主党重鎮の捜査に着手

グレイス・イライザ・グッドウィン 米トランプ政権と野党・民主党の対立が激化する中、司法省は16日までに、連邦移民当局の業務を妨害しようとした疑いで、ミネソタ州のティム・ウォルズ知事とミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長について捜査に着手した。同州では、移民税関捜査局(ICE)が一般市民の女性を殺害した7日の事件を機に、緊張が高まっている。 BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、司法省はウォルズ知事(民主党)とミネアポリスのフレイ市長(民主党と会派を組むミネソタ民主農民労働党)について、両氏のICEに関する発言を理由に捜査に着手している。 ウォルズ知事はミネソタ州民に対し平和的に抗議するよう呼びかけてきた。しかし、知事がICEを「現代のゲシュタポ」と表現したことなどをトランプ政権の関係者は問題視し、扇動的表現を使っていると非難している。フレイ市長は、移民職員はミネアポリスから出て行くべきだと要求している。 CBSは米政府関係者の話として、司法省は、公務員の職務執行を妨害または侵害する共謀を犯罪とする連邦法の米法典第18編第372条を根拠に、両首長を捜査していると伝えた。同法は、連邦職員の職務遂行を2人以上が「暴力、威圧、または脅迫」で妨害するため共謀することを、犯罪だと定めている。 ウォルズ知事は16日、自分が捜査対象になったという報道を受け、「司法制度を政敵に対して武器化するのは権威主義の手法だ」、「ルネー・グッド射殺で捜査されていないのは、彼女を撃った連邦職員だけだ」とソーシャルメディア「X」に投稿した。 フレイ市長はBBCへのコメントで、「私は脅しに屈したりしない」と述べた。市長は、「これは明らかに、ミネアポリスと地元の法執行機関のために立ち上がり、この政権がもたらした混乱と危険から住民を守ろうとする私を、威圧しようとするものだ」と批判した。 BBCは、両首長への捜査について司法省に問い合わせている。 ミネアポリスでは7日、ICE職員がルネー・ニコール・グッドさん(37)に向けて発砲し、死亡させた。全国的な抗議行動が起こり、ミネアポリスで緊張が高まるなか、14日にも同市で、ICE職員が男性の脚を撃つ事件が発生。夜間、抗議行動や破壊行為が続き、トランプ大統領が軍の投入を示唆する状況となっている。 ■遺体に4つの銃創か ミネアポリスでは16日、グッドさん殺害について新しく詳細が明らかになったのを受け、移民当局への抗議が続いた。アメリカでは19日が公民権運動活動家マーティン・ルーサー・キング牧師の誕生日を記念する祝日にあたり、週末は三連休になるため、ミネアポリスの現地当局は市民に対し、平穏に行動するよう呼びかけている。 事件の公式報告書を閲覧したCBSによると、グッドさんの遺体には少なくとも3発の銃創があり、4発目とみられる銃創が頭部にあったという。 CBSニュースが閲覧したミネアポリス消防局の報告書によると、救急隊が7日の銃撃現場に到着した時、グッドさんは胸に2発、左前腕に1発、さらに「患者の頭部左側」に銃創とみられる4つ目の傷を受けていた。 救急隊員が到着した際、グッドさんは反応がなく脈が不規則で、病院へ向かう救急車内で死亡が確認されたという。 トランプ政権は、グッドさんがICE職員の公務執行を妨害し、職員を車でひこうとしたと主張している。これに対して地元当局は、グッドさんは職員に危害を加えず合法的に、当局の活動を観察するオブザーバーだったと説明している。 事件現場の映像には、交通を妨げて道路の中央に停まっている車にICE職員が近づく様子が映っている。 職員は運転席のグッドさんに、車から降りるよう指示している。車の前には職員の一人が立っていた。グッドさんがハンドルを切って走り去ろうとすると、自動車の前に立っていた職員が銃を抜いて発砲した。 映像には、発砲した職員がその後、歩いて現場を離れる様子が映っている。 しかし国土安全保障省(DHS)の職員はCBSに対して、職員は事件後に胴に内出血を起こしたと話した。詳細は明らかにされていない。 事件の捜査は連邦捜査局(FBI)が担当しているが、発砲した職員に対する連邦政府による公民権関連の捜査は行われていない。地元の捜査当局は、自分たちが捜査から締め出されていると批判している。 ドナルド・トランプ大統領は16日、デモ参加者と地元指導者を非難した。 自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」への投稿で大統領は、抗議者を「高額報酬をもらっているプロ」だと非難。ウォルズ知事とフレイ市長は、現場を「まったく統制できなくなった」と書いた。 トランプ氏はその後、ホワイトハウスで記者団に対し、反乱法の発動によるミネソタへの軍派遣については、現時点では実施するつもりはないと話した。トランプ氏は、「必要なら使う。しかし今は必要だとは思わない」と述べ、「とても強力なものだ」と付け加えた。 トランプ氏は15日には、ミネアポリスでの連邦当局による移民取り締まりをめぐる情勢不安を鎮めるため、ほとんど使われることのない「反乱法」の発動も辞さないと警告していた。 ■民主党議員たちが現地入りし政権を批判 ミネソタ州内では、数千人のICE職員が活動を続けている。 野党・民主党の連邦議員団が公聴会のためミネアポリスを訪れ、16日の記者会見で、ICEが「無謀で無法な行動」をしていると非難した。 トランプ大統領と長年対立しているミネソタ州選出のイルハン・オマール下院議員は、ICEは「混乱と恐怖を扇動しようとしている」と述べた。 ニューヨーク州選出のアドリアーノ・エスパイヤト下院議員は、ICEは「殺傷力の高い武器」になってしまったと述べた。 ワシントン州選出のプラミラ・ジャヤパル下院議員は、ICE職員が覆面で顔を隠すことを禁じるべきだと主張。令状なしの逮捕も禁じ、ボディカメラと名札の着用を義務付けるべきだと述べた。 民主党議員たちはこのほか、ICEに拘束された複数の住民から話を聞いた。住民たちは、自分がアメリカ国民だと証明できるまで、ICEによって拘束具をつけられ何時間も拘束されたと、経験を口々に話したという。 BBCはDHSとICEにコメントを求めている。DHSのトリシア・マクラフリン報道官は16日、CNNに対し、DHSが拘束する人物の「周囲にいる」誰かについて「合理的な疑い」がある場合、当局はその人に対して身分の証明を要求することがあると述べた。 報道官は、そのような戦術は差別的になり得るという指摘を否定。「人種的な嫌悪など、DHSにあってはならない」と述べた。 (英語記事 US justice department investigating Minnesota Democrats over alleged obstruction of ICE)

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