高市早苗首相は1月23日、衆議院の冒頭解散に踏み切った。対抗する立憲民主党と公明党は新党「中道改革連合」を結成。2月8日の開票結果次第で更なる政界再編も起こり得る劇的な展開だが、もとをただせば高市首相の台湾有事答弁に行き着く。答弁に反発した中国の経済的威圧、ドナルド・トランプ政権のベネズエラ強襲、電撃解散の決断、政界再編──。バタフライ・エフェクトのように、予想を超えた連鎖が重なっている。あの答弁からこれほどまでに日本政治が変わることになるとは、誰が想像しただろうか。 事の発端は、昨年11月7日の衆院予算委員会だ。高市首相は「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得る」と答弁。事務方が用意した「台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控える」という想定問答から大きく踏み込んだ。 10月31日の首脳会談で習近平(シー・チンピン)国家主席と握手を交わした直後だけに、中国政府は激しく反発した。即座に渡航自粛や水産物の輸入再停止措置を取り、王毅(ワン・イー)外相は「日本軍国主義の復活を決して許さない」と、激しい言葉で非難した。 しかし、その後も高市政権は7割超の高支持率を維持。特に若年層の支持率が9割超という驚異的な数値を示した調査結果もあり、首相の解散判断を下支えしている。答弁撤回を拒む高市首相の対中強硬姿勢は支持層から喝采を浴び、「汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」と罵った薛剣(シュエ・チエン)駐大阪総領事の戦狼外交は、反中世論をたき付ける逆効果をもたらした。業を煮やした中国政府は1月6日、軍民両用(デュアルユース)製品の対日輸出を禁止し、虎の子である中国産レアアースの輸出制限をチラつかせ始めた。 レアアース規制が発動されれば国内産業の被る影響は甚大だ。金看板の経済対策が揺らぎ、高株価の維持も危うい。かといって答弁を撤回すれば、圧力に屈した前例を残し、自民党に回帰しつつある保守岩盤支持層を失望させることになりかねない。スパイ容疑での邦人拘束、不買運動・店舗破壊・邦人襲撃、工場接収・漁船拿捕、軍事的挑発……といった今後の中国側の出方を見極めつつ、冷静に対応する長期戦になると思われた。12月25日に与党から野党に伝達された通常国会召集日は、例年並みの1月23日だった。