俳優の細田善彦(38)が、なにわ男子の西畑大吾(29)が主演する放送中のドラマ「マトリと狂犬」(毎週火曜深0・59~ほか、MBS・TBSドラマイズム)で新境地を見せている。TBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」や、NHK大河ドラマ「青天を衝け」などで安定した演技を見せてきたが、今作では薬物に対して異常な執念と常軌を逸した捜査手法で“マトリの狂犬”と恐れられる麻薬取締官・黒崎徹を熱演。ワイヤーを付けて飛ぶなど、ド派手なアクションにも挑戦している。残り2話となったドラマの見どころについて細田に聞いた。(西村 綾乃) 薬物の不正使用を取り締まるため、一般の警察官には認められていない「おとり捜査」など特別な捜査手法が認められているのが麻薬取締官。細田が演じる黒崎は、その中でも単独行動が多く“マトリの狂犬”として恐れられている。薬物の売人・梅沢恭之介(西畑)を問い詰めた第1話では、抵抗する相手を羽交い締めに。口を割らない梅沢を相手に、「致死量の覚醒剤を体内に注入する」と脅すなど、常軌を逸した行動は作品に緊張感をもたらしている。不正薬物をこの世から排除するためならば、どんな手段もいとわない。その強い決意はずんと響くセリフからも伝わってくる。 「普段よりも声のトーンを低く、野太くしようと意識しました。普段からトレーニングはしているのですが、アクションはまた別なので、アクション部の方に指導していただきました。撮影での動きを教わってからも、1人で繰り返し練習をしました」とストイックだ。中でも難しかったのは、相手がいないと練習できない「背負い投げ」。「第6話で出てくるのですが、1番難しく感じました。自分の体をどのように相手に当てて背負うのか。そのタイミングや、体の入り方を何度も練習させていただきました」。スピード感と緊張感あるシーンは、撮り直しなどはなく1度でOKが出たのだという。 役作りとして意識したのは声のトーンと、体作り。2019年に主演した映画「武蔵―むさし―」でも、役に真摯に取り組む姿勢を見せたが、剛健な黒崎としてカメラの前に立つために「体を大きくしようと、撮影の前にはたくさん食べて体重を数キロ増やしました」。その変化を誰よりも早く感じていたのは、同世代の俳優で親しくしているNEWSの加藤シゲアキ(38)だった。 加藤とは昨年4月から5月にかけて、加藤の主演舞台「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」で共演。ドラマの撮影を控えた5月は、地方公演が始まったが、大阪など宿泊していたホテルの朝食バイキングで“爆食い”していたそう。「ドラマの撮影に入る3週間くらい前から食べる量を増やしました。普段は70キロぐらいですけど、5月末には自分でも『重くなったな』って感じていました。僕が大きくなったことをいち早く察知していたのは加藤シゲアキさん。演目中に寝転がっている僕を、加藤さんが引っ張り出すシーンがあったんですけど、日に日に僕が重くなるから『いい加減にしろ!』って怒ってました(笑い)」 食べ続け、ひと回り大きくした体で初めてのワイヤーアクションにも挑戦した。それは、薬物中毒のタレント・加賀響を務めた芸人の九条ジョー(32)を建物の屋上まで追い詰めた第5話。「飛び降りるぞ」と凄む加賀を、「飛ぶなら早くしろ」とたきつけ、最後は共に落下した。 「撮影ではワイヤーを付けて飛ぶんですけど、飛ぶために建物の縁に立った時は、かなり高さがあったので、これは結構なことだなと思いました」と回想。20年以上俳優を続ける中で、初のワイヤーアクションだったが、なんと同シーンの撮影直後に再び屋上から落ちる作品があった。それは昨秋放送のドラマ「地獄は善意で出来ている」の終盤。屋上から花壇に落ちる場面だった。「実際には落ちる場所に段ボールで作ったクッションがあったのですが、今度はあそこかって。よく落ちる年だなと思いました」 監督はお笑いコンビ「品川庄司」の品川祐(53)と松下洋平(47)が担当。シリアスなシーンが続く中で、笑いがあるのも今作の特徴だ。中でもマトリと警察の手先となって動く梅沢の自宅を訪れるシーンは、真剣な表情であればあるほどコントをしているような面白さがある。 「僕は西畑くん演じる梅沢の自宅に何度か行くんですけど、その登場の仕方は注目してほしい場面のひとつです。白湯を飲んでいたり、寝ている西畑くんの顔を上から覗き込んでいたり。品川さんと松下さんが、黒崎の人間味が出てくるように味付けをしてくださっている感じがありました。不正薬物に執着する黒崎の姿は下手したらちょっとロボットのような人間にもなりかねない危うさがあると思うんですけど、皆さんが味付けをしてくださったおかげで、人間味があるキャラクターになりました」 細田演じる黒崎は“マトリのS(スパイ)”として動かす梅沢(西畑)と、線を引きながらも絆が芽生えていることを感じさせる場面もある。 「撮影中は西畑くんの明るさにも助けられました。彼はとにかく受けの芝居がうまくて、あとツッコミもうまい。梅沢が不満を言うと、黒崎は必ず『逮捕するぞ!』と凄むんですけど、最初は一方的に支配していた関係だったけど、話しが進んで行く中で、支配だけではなくなり、『また、それかよ』とあきれた感じのリアクションで返してくれた。そういう掛け合いが二人の関係にいろんな色味を付けてくれたと感じています」。残り2話の2人のやり取り。出現する強敵とのアクションシーンにも注目したい。 作品に入っている時は、「その役のにおいをまとってしまいがち」という細田。黒崎のように“執着してしまうもの”はあるのだろうか。しばらく考えたあと「僕、多分。全くそれがない人なんです」と困った顔。記者のポカンとした顔を見て、再び考え込むと、「焦りたくないし、焦らされたくもないので、焦らないですむ動きをしてます。例えば、ちょっと離れた場所に撮影に行く時は、時間に余裕を持って到着するようにしています。近くで待機して時間になったら撮影現場にいく。そうしたら、焦らないですよね」と絞り出してくれた。 カメラマン役を務めた映画「テネメント」(監督ソックユー・チィア、同ウンラーソティテープ・ネット)が昨年、日本時間16日にアメリカで発表される「第98回米アカデミー賞」の国際長編映画賞のカンボジア代表として選出された。日本代表として選ばれた映画「国宝」と共に最終候補には残らなかったが、台本作りにも携わり5年をかけた作品が評価されたことを誇りに思っている。 「最終選考には残らなかったのですが、カンボジア代表になったと一報を聞いた時に一緒に作品を作ったチームみんなで喜び合えたのが幸せでした。映画は2年前にオランダで開かれた『ロッテルダム国際映画祭』で世界初上映されて、その後大阪の映画際でも上映されたんですけど、日本での本公開はまだで。ほかにもいくつか映画祭には行ったんですけど、最後はアメリカでみんなに会えるのかなと思ったらうれしかったですね」 映画は東京で暮らしていた漫画家の女性が、実母の死をきっかけに恋人のダイチ(細田)とカンボジアを訪れたことから、奇妙な出来事に巻き込まれていく物語。2人のカンボジア人の監督、アメリカ人のカメラマン。フランス人の音声スタッフなど、国際色豊かな面々で作り上げた。脚本よりも先に音の構成を作っていたという異色作を、日本で観ることができる日を楽しみにしたい。 ◇細田 善彦(ほそだ・よしひこ) 1988年(昭和63年)3月4日、東京都生まれ。2004年にデビュー。Netflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」が4月27日から配信開始。4月スタートのTBS日曜劇場「GIFT」(日曜後9・00)への出演も控えている。