裁判所が2度にわたって刑事裁判をやり直すべきだと判断したのに、検察の不服申し立てにより、再審公判が始まらない事件がある。1984年に滋賀県日野町で酒店経営の女性(当時69)が殺され、金庫が奪われた「日野町事件」だ。強盗殺人罪で無期懲役が確定した阪原弘(ひろむ)・元被告の再審開始を大津地裁が認めてから7年超。法曹関係者の間では、「年度内にも最高裁の判断が示される」との見方がある。 元被告は受刑中の2011年に病死したが、遺族が無罪を訴え再審を求めてきた。再審開始が確定すれば、殺人事件として戦後2例目の「死後再審」になるとみられる。 確定判決によると、元被告は1988年、滋賀県警の任意の取り調べで自白し、逮捕された。裁判で無罪を主張したが、地裁と高裁は、元被告が遺体や金庫の発見現場に警察官を案内できたなどとして無期懲役を言い渡し、2000年に最高裁で確定。元被告が再審請求中に病死したため、遺族が12年に再審を請求した。 審理が長引いている大きな要因は、裁判所の再審開始の決定に対し、検察が2度にわたり不服申し立てをしたことだ。 大津地裁は18年7月に再審開始を認めたが、検察が即時抗告し、大阪高裁で審理が続いた。高裁も23年2月に再審開始を認めたが、検察が最高裁に特別抗告していた。 ■再審見直しの議論に影響も 再審制度については、法相の諮問機関である法制審議会が25年3月から見直しの議論を始め、再審開始決定への検察の不服申し立ての是非も論点となった。日本弁護士連合会や冤罪(えんざい)被害者らは、禁止するよう求めたが、今月12日にまとまった結論には盛り込まれなかった。 今後は与党内や国会で法改正に向けた議論が始まる。日野町事件の再審を最高裁も認めれば、議論の方向性に影響する可能性がある。 日野町事件については検察の特別抗告から3年近くがたち、法曹関係者の間には「最高裁の判断がいつ出てもおかしくない」との声がある。刑事事件で最高裁が高裁の判断を覆すのは、重大な事実誤認や審理の法令違反があった場合などに限られ、ハードルは高い。 ただ、鹿児島県大崎町で1979年に当時42歳の男性の遺体が見つかった「大崎事件」で、地裁と高裁が認めた元被告の再審開始決定を、最高裁が取り消した例もある。