汚職事案ずさんさ露呈…東大、国際卓越研究大認定へ問われる統治

世界最高水準の研究大学を目指す国際卓越研究大学に向けて東京大学のガバナンスが問われている。教員の逮捕を機に資金管理のずさんさや責任の曖昧さが明らかになった。文部科学省の有識者会議は大学の本部と部局が一体となって判断し責任を負うガバナンスを求めている。東大は本部のガバナンス機能を強化して信頼の回復を図る。(小寺貴之) 「総長として不退転の決意で部局と本部が一体として取り組んでいる改革をリードしていく」と藤井輝夫総長は改革案を説明する。東大医学部付属病院では整形外科と皮膚科から逮捕者が出た。収賄などの事実関係は今後、司法の場で明らかになるが、皮膚科事案では東大は皮膚科長を懲戒解雇した。 同事案では日本化粧品協会と東大で社会連携講座を設置して共同研究を進めていた。共同研究の予算は当初年間3000万円で3年間の合計が9000万円。その後の増額申請が3回あり、総額1億9948万円に増えている。病院内に分析センターを設置する借上費や分析装置などが盛り込まれた。だが協会が支払ったのは100万円だけだった。 東大は事案が発覚した後の2024年12月に日本化粧品協会などに未払いの23―24年度分の5950万円を支払うように請求している。未払いの間、研究費や人件費は大学病院の皮膚科で立て替えていた。藤井総長は「一度、社会連携講座を設置すると教員の人件費が自動で振り込まれる」と説明する。 東大の調査では社会連携講座では共同研究目的にはない化粧品の製品開発を行っていたことが分かっている。皮膚科がどのように開発資金を捻出したのかは明らかになっていない。また大学病院として協会からの入金がないまま放置したことについては、調査に当たった国広正弁護士が「管理がルーズであった。隠蔽(いんぺい)などの意思はなかったと認知している」とした。併せて「会計責任者には十分なヒアリングはできていない」とも述べた。 元皮膚科長は未払いの事実を認識していたが、協会側に支払いを強く要請していない。協会は元皮膚科長に2076万円の接待をしたとしており、その接待費相当額で未払い分を相殺すると支払いを拒否している。 対策として大学本部による部局への抜き打ち検査の仕組みを設ける。ただ部局に隠す意思があれば、本部が見抜くのは困難だ。 そしてコンプライアンスの担当を事務組織と人事労務、法務の担当理事から財務と資産活用を担当する理事(最高財務責任者〈CFO〉)へと移管した。4月からは最高リスク責任者(CRO)を配置し、総長や役員が全学的なリスクを共有し迅速に対応する体制を整える。コンプライアンスは倫理観に基づいた現場の自発的な活動が重要だが、本部からはリスクとして扱われることになる。

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