香港で昨年11月、168人の犠牲者を出した高層住宅群の火災直後、政府の責任などを追及する署名活動をして逮捕、保釈された関靖豊氏(24)が24日までに産経新聞の取材に応じた。関氏は在学していた大学から除籍処分を受け、「罪も過ちも犯していない」と反発。卒業生や教職員らも処分撤回を求めるなど波紋が広がっている。 「まるで植民地のようではないか」。香港中文大の学生だった関氏がそう感じたのは、香港政府の李家超行政長官が火災発生後、犠牲者への哀悼の意を示した中国の習近平国家主席に、感謝の言葉を繰り返し表明したときだ。現場で消火・支援活動に当たる人々に対して、ではなかった。 政府など行政側が、火災前から住民が訴えていた「安全」への懸念を無視し、習氏が求める「安定」を優先した結果、起きた惨事ではないのか。 関氏はすぐに現場近くでビラを配り、独立調査委員会設置や政府の責任追及などを求める署名活動を行った。香港警察の国家安全部門に扇動容疑で逮捕されたのは翌日、つまり火災発生から3日後のことだった。 関氏は2022年にも中国民主化運動が弾圧された天安門事件(1989年)が起きた6月4日にビラを通りなどに貼って逮捕され、罰金刑を受けている。 「香港では天安門事件について何も話せなくなった。みんなが簡単に自ら口をつぐんでしまうことも問題ではないか、と考えた」と振り返る関氏。ビラには「真実を話すことを恐れるな」と書かれていた。 関氏はそのときの裁判でこう主張している。 「小さな代償は、沈黙する理由にはならない」 火災原因の調査などを要求し逮捕された関氏は2日後に保釈された。待っていたのは大学側の査問だった。関氏は無実を訴えたが、今月12日、「除籍処分」の通知が届いた。 今回の逮捕に対する直接の懲罰ではないとしつつ、過去の罰金刑なども勘案した結果だとする大学側。「学歴を奪われても、尊厳は奪われない」と関氏はコメントした。 香港中文大は有能な人材を輩出する名門大学として知られるが、卒業生や在学生、教職員らは20日、大学側に処分撤回を求める署名活動を始めた。