欧米の政財界の有力者を巻き込み、世界に衝撃を与えた性的スキャンダル「エプスタイン事件」。2026年1月30日、この事件にまつわる資料、通称「エプスタイン・ファイル」の一部が新たに公開された。 資産家のジェフリー・エプスタイン元被告(2019年死亡)が、未成年の少女達に金銭を払い、性行為の相手をさせていたとして児童買春で起訴されたこの事件。公開された資料には一体何が書かれていたのか。この事件はなぜこれほど波紋を広げているのか? 在米ライターの堂本かおる氏が寄稿した。 ◇ 故ジェフリー・エプスタインは小児性愛者だった。エプスタインは2019年にセックス・トラフィッキング(=性的人身売買)により逮捕され、獄中で自殺している。 エプスタインは少女たちを自分で性的虐待するだけでなく、複数の著名男性にもあてがっていたとされている。MAGA(熱心なドナルド・トランプ支持者)は「虐待者の多くがリベラルの富裕層であり、ファイルを公開することで ”ディープステート” (=影の政府)を撲滅させられる」とする陰謀論を拡散しており、エプスタイン・ファイルに含まれる「顧客リスト」の公開を渇望していた。 リベラルや民主党支持者の多くもまた、「トランプとエプスタインは旧友であり、トランプも顧客リストに名が上がっているのだろう」と考え、その多くはファイル公開を望んでいた。こうした背景が、エプスタインの死後6年が経過しても、この問題がアメリカで関心を集め続けた理由の一つとしてある。 そしてついに、「エプスタイン・ファイル」の一部が新たに公開され、事件は大きく動き出したのだ。 だが、「エプスタイン・ファイル」は、解読が非常に難しい。エプスタインと親しい友人とのメールは砕けた文体で省略が多く、当事者同士にしか通じない隠語やジョークも含まれる。送受信者の名前が黒塗りされているものも多く、大手メディアがチームを組んで解読に取り組んでいるほどだ。 ファイルにはトランプ、ビル・クリントンという歴代大統領をはじめ、イーロン・マスク、ビル・ゲイツなど、世界的に名を知られる著名人の名が大量に含まれている。現千葉工業大学学長の伊藤穰一氏など、何度も名前が登場する日本人もいる。もっとも、ファイルに名があること自体は犯罪への加担やモラルの欠如を意味せず、これが世界を戸惑わせ、かつ全容の解明が求められている理由だ。