名古屋市西区のアパートで1999年、住人の高羽(たかば)奈美子さん(当時32)が殺害された事件は5日、殺人容疑で逮捕された安福(やすふく)久美子容疑者(69)の勾留期限を迎えた。名古屋地検は同日、殺人罪で起訴するとみられる。26年間の捜査を追った。 ◇ 静かな住宅街のアパート、その部屋には殺意が漂っていた。 99年11月13日午後、愛知県警の元捜査員は、同区稲生町のアパートに向かった。高羽さんはうつぶせで倒れ、首のあたりに刺し傷が集中していた。「すごい殺意だ」。失血死だった。 不思議な点がいくつもあった。夫の悟さん(69)は仕事で家を不在。長男の航平さん(28)は当時2歳で家にいたが、襲われず無事だった。廊下には一家が購入したものではない乳酸菌飲料がこぼれていた。玄関の血痕は外の階段に続いていた。アパート前で車の修理作業が行われていたのに、目撃はなかった。 捜査は長期化した。逃走ルートは住宅街の角を10カ所も曲がっており、県警は犯人が土地勘があるとみた。一家の交友関係にも捜査の軸足は向けられたが、決定的な糸口は得られなかった。 悟さんは「容疑者が捕まったら現場検証させる」と決意し、家賃を払って借り続けた。 捜査本部は、関係者5千人以上の中からDNAの提供を受けていない人など約500人を抽出。昨年8月以降、安福容疑者にも当たっていた。昨年10月にDNAの提供に応じ、事件への関与をほのめかした。血痕のDNA型との一致も確認され、殺人容疑で逮捕された。容疑を認めた後、黙秘に転じたとされる。 容疑者は悟さんの高校時代の同級生。なぜ、妻が殺されなければならなかったのか。「逮捕を聞いたときは一区切りかなと思って喜んだが」。悟さんはもどかしさを募らせる。