※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。 ある日突然、学校に行けなくなった小学3年生の勇。理由がわからず数ヶ月経った頃、おぞましい事件に巻き込まれていたことが判明し――。 漫画『性被害のせいで、息子が不登校になりました』(あらいぴろよ:著、斉藤章佳:監修、飛田桂:取材協力/KADOKAWA)は、息子の性被害を知った家族が、周りの支援を受けながら事件と向き合おうとする。けれども、自分を責める勇の具合はますます悪くなり、明るかった家族は崩壊に向かい……。 監修を務めたのは、精神保健福祉士/社会福祉士であり、西川口榎本クリニックの副院長を務める斉藤章佳氏。最近増加するSNSを通じた性犯罪の手口や、性加害者の認知の歪み、性被害を避けるためにできることなどをうかがった。 ――前回のインタビューで、男の子の性被害に対する意識の低さについておっしゃっていました。家庭で性教育をするにあたって、心得ておくべきことがありましたら教えてください。 斉藤章佳さん(以下、斉藤):男の子に関しては、お父さんの役割も大きいと思っています。お父さんは息子と同じく、男性というジェンダーを持って大人になっていますよね。今の息子さんの年齢の時にどういう発達の過程があって、身体と心がどういう成長をしてきたのか。たとえば、恋愛をして恋人ができる、関係性が発展していくと性行為にいたることがあるし、コンドームの意義や性感染症について話すなど、お父さんとして自身の経験から伝えられることがあると思うんです。 ――そうなると、お父さんも性に対する知識を持っておいたほうがいいでしょうか。 斉藤:日本の父親は、自分の性を語る言葉を持っていないと感じることが多いです。おそらく、「性は物心がついたら自然に覚えるもの」っていう認識がある。父親自身もしっかりと性について学ぶ機会がなかった。その中で、自然と偏った知識や認識を身につけてしまった人をたくさん見てきました。 ――漫画に登場する父親もそうですね。 斉藤:はい。でも、性教育にくわしくなくてもいいんです。 世界標準の性教育「包括的性教育」は、性や生殖の知識だけでなく、性の多様性やジェンダーやセクシュアリティの平等など、人権教育であると言われています。何が正しくて、何が異常なのかは、基本的に相手を傷つけていないかどうかの判断が大事です。そこをベースにしながら、自分の経験を自分のことばで語ることはできるはずです。失敗談も含めて。親が一人称で子どもに語ることってあまりないと思うので、だからこそ響く。それが、子どもを加害者にも被害者にもさせないために親ができることの最初の一歩だと思います。 取材・文=吉田あき 斉藤章佳: 1979年生まれ。大学卒業後、国内最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」にソーシャルワーカーとして勤務。現在、西川口榎本クリニックの副院長。25年にわたり、アルコール依存症、ギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどさまざまなアディクション(依存症)問題に携わる。専門は加害者臨床で、3500人以上の性犯罪者の再犯防止プログラムに携わる。著書に『「小児性愛」という病-それは、愛ではない』(ブックマン社)、『子どもへの性加害-性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)、『夫が痴漢で逮捕されました-性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)、最新刊に『10代のための「性と加害」を学ぶ本: 暴力の「入口」「根っこ」「しくみ」を知る包括的性教育マンガ』(時事通信出版局)などがある。