●サウナ特化に改装予定 昨年秋に廃業した七尾市和倉温泉の旅館「十番館」で、水栓金具や電気配線などが盗まれていたことが分かった。同館はサウナ特化型ホテルに全面改装される予定で、取得した不動産仲介業者が発見し、七尾署に被害届を出した。配線工事をやり直す必要があり、損害は少なくとも400万〜500万円に上るという。和倉温泉では他にも旅館で金属類の盗難が発生しており、解体や再建の工事に乗じた犯罪が復興に水を差している。 旧十番館を取得した「ゼン・ランド」(東京)によると、3月中旬、約30室の客室のほぼ全てのユニットバスから水栓金具が取り外され、天井埋め込み式のエアコン数台が持ち去られているのを、工事関係者が見つけた。改装前の構造調査のために開けた壁や天井の穴からむき出しになった電気配線が切断されていることも確認した。 旧十番館は2024年1月の能登半島地震で被災し、同年6月に事業を停止して廃業に至った。ゼン・ランドは昨年12月、既存の建物がそのまま活用できるか調査を実施しており、その際、被害はなかったという。今年3月、物件を取得し、着工に向けた準備を進める中で盗難が発覚し、七尾署に通報した。管理が手薄だった期間に何者かが侵入し、換金目的で金属類を盗んだとみられる。 昨年12月には、建物内に置いていた電動ドライバーやバッテリー、充電器などの工具が夜間に盗まれたこともあったという。 同社によると、電気のケーブルはどこを切断されているか分からないため、現状の設備を活用するのが難しく、配線工事を追加で行う必要が生じた。藤井善英社長は「これから再建していこうと意気込んでいたのに、水を差された。余計な手間と費用がかかるので大きな痛手だ」と憤る。 七尾市内では、昨年9月に公費解体中の旅館に侵入し、銅線ケーブル約1トン(時価約150万円)を盗んだとして窃盗容疑で外国籍の男性(不起訴処分)が逮捕された。関係者によると、被害に遭ったのは和倉温泉の旅館だった。 能登半島地震以降、能登地区では無人状態が続く空き家や不特定多数の人が出入りする解体現場を狙った窃盗が相次いでいる。防犯対策を講じにくく、発覚が遅れて被害時期の特定が難しいケースもある。ゼン・ランドによると、旧十番館は施錠されていたが、地震で損傷した場所から忍び込んだ可能性があるという。 ●窃盗犯認知2.3倍 石川県警によると、2025年に羽咋郡市以北9市町で認知した窃盗犯は569件で、地震前の23年(240件)と比べて2・3倍に増えた。七尾市内では25年160件、23年64件で、地震前の2・5倍となっている。