熊本県八代市が発注した新庁舎建設工事をめぐり、特定の建設業者を入札で有利にすることなどを市に働きかけて6千万円を受け取ったとして、警視庁と熊本県警の合同捜査本部は7日、同市議で議長経験もある成松由紀夫容疑者(54)ら2人をあっせん収賄容疑で逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。 八代市は人口約12万人の県内第2の都市。2016年の熊本地震の影響で、旧庁舎はひびが入るなどした。新庁舎の総事業費は約171億円で、このうち「復興の象徴」と位置づけられた庁舎本体の工事は、入札金額に加え技術力なども評価する総合評価方式の一般競争入札で、前田建設工業(東京)を中心とする共同企業体(JV)が19年9月に118億円で落札した。 捜査関係者によると、成松容疑者は16年~19年6月ごろ、元市議の松浦輝幸容疑者(84)と共謀し、新庁舎建設工事の入札で、前田建設工業側が有利になる評価基準案を採用するよう市幹部らに指示。さらに同年8~12月ごろには、落札した同社側の利益を約11億円増やすために市に働きかけ、21年6月上旬ごろ、これらの見返りとして同社社員から現金6千万円を受け取った疑いがあるという。 また、同社九州支店幹部らが関与した疑いがあるが、現金を渡したとする贈賄行為については既に時効が成立している。成松容疑者への現金の渡し場所は、元市議で自民党八代支部長も務めた松浦容疑者の自宅とみられるという。 成松市議は現在6期目で、自民党市議団の元団長。事件当時は、市議会の副議長と議長を務めるなどしていた。市関係者の一人によると、市幹部らが逆らいにくい状況があったという。 捜査関係者によると、同市が採用した総合評価方式の評価基準は、同社が作成した案とほとんど同じだった。役場庁舎を建設した実績があることなど、同社側が有利になる内容と評価点になっていたという。 ■「でっち上げ」 市議は疑惑を否定 こうした新庁舎建設工事をめぐる「官製談合疑惑」が週刊誌報道などで明るみに出ると、市議会は25年12月に百条委員会を設置し、調査を開始した。不正への関与が指摘された成松容疑者は今年4月に会見を開き、市側への増額などの指示や金銭の授受を否定。「(疑惑は)でっち上げだ」と主張していた。 熊本地震は、2016年4月14日に最大震度7の前震が発生。16日には再び最大震度7の本震が起きた。28時間以内に震度7が連続するのは、国内観測史上初だった。熊本、大分両県で災害関連死を含め278人が亡くなった。 新庁舎は地上7階、地下1階で、延べ床面積は約2万7500平方メートル。新庁舎建設の事業費の大半は、災害復旧事業債や合併特例債で賄われた、返済額の多くは国から配分される地方交付税で措置される。公費が支える災害復興事業を舞台に不正が行われた疑いがある。 合同捜査本部は、関係者の供述や内部資料などから、便宜供与や資金の受け渡しなどの詳しい経緯を調べている。(板倉大地、西岡矩毅、座小田英史) ■熊本県八代市の新庁舎建設をめぐる主な経緯 ※市関係者や捜査関係者への取材による 2016年4月14、16日 熊本地震発生。八代市庁舎も被災 19年6月 市議らが、新庁舎建設工事の入札では前田建設工業が有利になるように市幹部に指示か 19年7月 新庁舎建設工事の入札公告 9月 前田建設工業などの共同企業体が建設工事を118億円で落札 11月 市議が市幹部に前田建設工業の利益増額を要求か。起工式 21年6月 市議が前田建設工業側から6千万円を受け取ったか 21年6月~22年3月 工事の設計変更や随意契約などで事業費が計約12億円増額される 22年2月 落成式、開庁 25年12月 市議会が建設をめぐる百条委員会を設置。調査を開始 26年5月 市議らがあっせん収賄容疑で逮捕