少し前、数年ぶりに中国を旅した。 上海で商談をし、その後、上海から西安まで7時間かけて高速鉄道で向かい、兵馬俑や、古都西安の街を楽しむ旅。半分仕事、半分遊び。 久しぶりに中国に行くのだ、とワクワクしていたら、「行って、大丈夫なのか?」と心配してくれる人が少なくなかった。「日本人とわかったら嫌な思いをするのではないか?」「あなたは逮捕されるのではないか?(←ひどい!)」「今、中国に行くのは危険なのではないか」……。一緒に行く女友だちの両親は「あなたが決めたなら止めないけれど……賛成はできない」と不安を隠さず、とにかく毎日安否の連絡をするように彼女に念を押したという。 私たちには移動の自由があるようで、実際は様々な制限がかけられている。円安に加え燃料が高騰しているために海外への移動が物理的に制限される。さらに世界は戦争状況にあるため、心理的な制限も強い。そして今の日本は、隣国である中国に対し、「理解不能な怖い国」という警戒心を一般の人が持つようになってしまっているのだろう。 あまりにも心配されるので、いつもよりも慎重な気分で中国に向かった。上海近郊で開催されるアダルトグッズ展示会でどうしても外せない商談の約束があったのだ。 この展示会は世界最大規模で、各国から10万人が集まる。年々その規模は大きくなっていると聞いていたが、私は10年前に1度参加したきり、行こうとは思わなかった。私の会社が取り扱っているヨーロッパメーカーの参加が少なく、言葉を選ばずに言えば、「あか抜けない」中国メーカーによる日本市場に向けて作る「男性向けの」「気持ち悪い」アダルトグッズ中心の展示会だったからだ。できれば行きたくない展示会でもあった。 ところが、だ。久しぶりに向かった上海の展示会の激変には衝撃を受けた。シンプルに、とんでもないレベルで洗練されていた。日本でよく見る2次元美少女系のアダルトグッズは皆無で(あったかもしれないが目に入らなかった)、美しいデザインのバイブレーターや、セクシュアルヘルスを意識した男性向けのメーカーのブースがずらりと並んでいた。10万人規模の巨大な会場は熱気にあふれ、コスプレをした若い中国人インフルエンサーたちがあちこちで配信をしていた。レズビアンが経営するセーファーセックスグッズのブースでは、性教育やレズビアンの人権に関するパネルが展示されていた。何よりも責任あるポジションで働く女性たちに何人も出会い、中には自ら工場を経営し女性向けバイブレーターを開発する30代の女性がいたことには本当に驚いた。