気軽に応募、なくなる逃げ道 闇バイト追体験のゲーム、教育の場に

SNSの求人募集からいつの間にか犯罪に手を染め、気付いた時には後戻りできなくなっている――。 そんな「闇バイト」の怖さを疑似体験するゲームが、教育現場で活用されている。3日には高松商業高校(高松市)で、犯罪に巻き込まれないための知識を学ぶ授業が行われた。 ゲームは「レイの失踪」。高校生のレイが突然、行方不明になる。彼女のSNSには、見知らぬアカウントからのメッセージがある。 「スマートフォンを代わりに1台契約していただければ15万円差し上げます!」 「身分証明書を持ったまま顔が見えるように自撮りを送ってくれますか?」 「もう個人情報全部送っちゃってること理解してるよね」 プレーヤーはレイの友人として、残された痕跡をたどり失踪の真相を探る。高額収入などをうたい、金に困っている人や社会経験の乏しい学生をおびき寄せ、脅して逃げられなくする犯罪の手口を知ることができる。 3日の授業では、3年生約290人が4人1班に分かれ、スマホを使って約30~50分の謎解きに挑戦した。生徒たちはチームメートと互いのプレー画面を見せ合いながら、ゲーム内で複数のSNSを行き来し、時には警察が実際に配布しているパンフレットも手がかりに解き進めた。 ■リアリティーを追求、開発者の思い ゲームを開発したのは、慶応大の学生らによるスタートアップ企業「クラスルームアドベンチャー(CA)」(東京都)。情報リテラシー教育の活動の中で、学校の先生たちから闇バイトの啓発教材を求める声を聞き、2024年に製作した。 メンバーが実際に闇バイトとみられるSNSの募集に応募してみたり、事件に関わった当事者に取材したりして、手口や文言のリアリティーを追求。内容は数カ月ごとに更新しているという。 中高生を中心に、これまで約5万人がプレー。今回、初めて香川県がCAと連携して授業を開いた。 ゲーム後には、実際の事例と結びつけて対処方法を学ぶ講義も。CAの代表、今井善太郎さん(24)はゲームクリアにも必要な警察相談ダイヤル「#9110」を紹介し「今はだまされないと思っても、将来、お金に困ったり孤独を感じたりした時に狙われるかもしれない。そんなときにレイを思い出し、踏みとどまるきっかけにしてほしい」と呼びかけた。(松本敏博) ■「捨て駒」でも、罪の重さは変わらない 警察庁によると、2025年、「匿名・流動型犯罪グループ(匿流)」の関与が疑われる資金獲得の犯罪で計1万2178人が摘発された。 今年5月には、栃木県で匿流によるとみられる強盗殺人事件も発生。少年4人が実行役として逮捕された。 強盗殺人罪は法定刑が死刑か無期拘禁刑のみという極めて重い罪。たとえ他人からの指示で犯したとしても、問われる罪名が変わることはない。 香川県内を含め四国各地でも、特殊詐欺を中心に匿流が関与したとみられる事件が相次いでいる。そうした事件で真っ先に検挙されるのは、闇バイトなどで集められた末端の実行役だ。 香川県警高松西署は今年5月、他人名義のキャッシュカードで現金を引き出したとして、自衛官の男(41)を窃盗の疑いで逮捕した。 県警の調べに「バイトとして言われた通りにやっただけ」と供述。特殊詐欺の「出し子」とみられ、逮捕までの約2週間は欠勤し職場との連絡も絶っていた。 なぜ周囲に相談できないのか。捜査関係者によると、容疑者らは決まってこう話すという。「相手に個人情報を渡し、『家に行く』『お前ももう犯罪者の一員だ』などと脅された」 県警生活安全企画課の竹安祐一次長は「闇バイトは、組織にとってはいつ捕まってもいい『捨て駒』。怪しいと思ったら、一刻も早く信頼できる大人や警察に相談してほしい」と訴える。 「#9110」や全国の署では、闇バイトに応募してしまった人の相談や保護を受け付けている。(松本敏博)

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