<悼む> 映画の名脇役として活躍し、バラエティー番組でも人気を博した中村玉緒(本名・奥村玉緒=おくむら・たまお)さんが9日、肺炎のため亡くなった。86歳だった。12日、所属事務所が発表した。通夜は16日、告別式は17日に都内の斎場で執り行われる。女優としては時代劇の娘役スターとして活躍、90年以降は強烈な「天然キャラ」でお茶の間に人気だった。 ◇ ◇ ◇ 助演女優賞の表彰で壇上に立った中村玉緒さんにサプライズ登場した夫・勝新太郎さんが花束を差し出した。はにかむような顔になった玉緒さんのほおをスッと涙がつたった。この人は本当に勝さんが好きなんだなと思った。34年前の日刊スポーツ映画大賞授賞式でのことだ。 この前年、受賞作「橋のない川」の奈良ロケに向かう新幹線の中で勝さんの「麻薬所持逮捕」を聞くという因縁もあった。文字通り苦楽をのみ込んだ愛情だった。 勝さんの晩年に夫妻共演した「夫婦善哉」は、芸に生きた2人の集大成であり、至福の時だったと思う。が、その幕あいに、勝さんは訪れた医師から診療中のノドの病が「陽性」だったことを告げられる。勝さんは口止めしたが、楽屋の外で玉緒さんは心ならずも耳にしてしまう。 「1部と同じように舞台に立つのはたいへんでした。夫は何事もなかったように振る舞っていましたが、世界が変わってしまったようなもんですから」 13年前の取材でも、玉緒さんは搾り出すように当時を振り返った。 バラエティー番組での活躍が目立つようになったのはこの頃からだが、「少しでも夫が喜んでくれたら、と思ってました」と明かした。 病室のテレビで玉緒さんを姿を見るのが勝さんの唯一の楽しみだったという。 「家では私と娘がたいへんなおしゃべり。世間は私が我慢していたように思ってますが、本当は夫の方が我慢していたんです」 勝新の妻を心底楽しんできたように言った時の笑顔が忘れられない。【相原斎】