映画の名脇役として活躍し、バラエティー番組でも人気を博した中村玉緒(本名・奥村玉緒=おくむら・たまお)さんが9日、肺炎のため亡くなった。86歳だった。12日、所属事務所が発表した。通夜は16日、告別式は17日に都内の斎場で執り行われる。女優としては時代劇の娘役スターとして活躍、90年以降は強烈な「天然キャラ」でお茶の間に人気だった。 ◇ ◇ ◇ 上方歌舞伎の名門成駒屋の2代目中村鴈治郎の長女として生まれ、兄は中村扇雀という歌舞伎の名門で育った。若い頃は美貌と演技力で、「炎上」「銭形平次捕物控」シリーズなど多くの作品に出演した。62年に周囲の猛反対を押し切り、俳優勝新太郎さんと結婚。長女真粧美さんと長男で俳優の鴈龍太郎さん(19年に55歳で死去)をもうけた。 勝さんが設立した「勝プロダクション」が経営悪化で81年に倒産、勝さんの2度のコカイン所持での逮捕など苦難にも見舞われた。それでも、世間を騒がせた夫が亡くなるまで35年間、献身的に支え続けた。死者への“手紙配達人”を演じた15年公開の映画「ポプラの秋」の取材会では、「主人が地獄にいるなら、私は天国ではなく、地獄に行きたい」「ただ主人に会いたい。それだけ」と愛を貫いた。 活躍の場は映画、ドラマだけにとどまらなかった。94年にTBS「明石家多国籍軍」でバラエティーに初挑戦。明石家さんまとのかけあいが人気となり、さんまが司会を務めるバラエティー番組に頻繁に出演。食品メーカー「マロニー」のCMなどでさらに知名度が広がった。私生活でもたばこやパチンコを楽しむなど、飾らない性格で親しまれた。 23年1月に出席した、ヒロインを演じた映画「大菩薩峠」(60年、三隅研次監督)4K上映記念のトークイベントが最後の表舞台となった。同2月、仕事先の名古屋で転倒し、背骨の圧迫骨折と診断。その後、都内の介護施設で療養生活を送っていた。施設でも、知人が訪ねると、多弁で楽しい会話をしていたという。 芸能関係者によると、先月に体調を崩して食欲がなくなっていたという。最後の出演作品は、介護施設に入る前年に撮影し、25年に公開された「THE RIGHT MAN 正義の男」(宅間孝行監督)だった。 ◆中村玉緒(本名・奥村玉緒=おくむら・たまお) 1939年(昭14)7月12日生まれ。京都市出身。京都女子学園中卒業後、53年松竹映画「景子と雪江」で女優デビュー。翌年に大映と専属契約を結び、時代劇の娘役スターになった。60年「大菩薩峠」などでブルーリボン賞助演女優賞受賞。映画「悪名」で共演した勝新太郎と62年に結婚。92年「橋のない川」で日刊スポーツ映画大賞助演女優賞受賞。同年「おんな坂」で歌手デビュー。11年に「京都名誉観光大使」に就任。血液型O。