警視庁麻薬Gメンの実名・顔出し告白…迷宮入り必至の難事件を解決に導いた「伝説の刑事」の捜査手法

取材中、小比類巻氏がふとインタビュー場所に飾ってある絵画を指差した。「額縁の裏に薄く伸ばした覚醒剤を貼り付けて密輸する、という手口もありました」。 この事件もいわゆる「首なし」状態でした。中国から送られてきた絵画に覚醒剤が仕込まれていたのを税関が発見したのですが、受取人も届け先も不明。迷宮入り必至の難事件に助っ人として駆り出された私が何をしたかと言えば、捜査資料と証拠品の洗い直しです。 かつて警視庁に平塚八兵衛という伝説の刑事がいました。彼が実践していたのが「証拠を全部、自分の目で見る」という作業。私のように後から3億円事件の捜査に加わった平塚刑事は押収されたバイクを再検証し、塗装する際に付着した新聞紙の切れ端を発見。容疑者がいたエリアを絞り込んだのです。 私は押収された額縁を分解してみました。額縁に覚醒剤を仕込む際、テープのりやゴムシートを使っていたこと、X線に写らないようカーボンシートで覚醒剤を挟んでいたことがわかりました。 綺麗にバラして、もう一度、警視庁本部の鑑識に出すと、指紋が一つ見つかりました。別の事件で神奈川県警に勾留されているヤクザのものでした。早速、神奈川県警に行って事情を説明し、捜査資料のコピーを取らせてもらいました。資料のなかに車にガサをかけた際に押収されたレシートがあり、川崎のホームセンターで大手文房具メーカーのテープのり、ゴムシートなどを買っていたことがわかった。件(くだん)の額縁に使われていた文房具と品目は一致します。 次は証拠固めです。額縁に使われていたテープのりとヤクザがホームセンターで買ったテープのりが同一かどうか調べるため、科学捜査研究所で成分分析をしてから大手文房具メーカーの本社に飛び、開発者に会わせてもらいました。テープのりにはポチポチ、網目状のドットがありますが、実はあれ、各社が特許を取っていてメーカーごとに違うんですよ。 ゴムシートは関東に本社がある日本の3大ゴムメーカーのなかの一社が製造しているものでした。両社の開発者に会って「当社の商品に間違いない」との証言を得ることができました。 それでもまだ納得いかず、もう一度証拠品を見直しているとガラスに白い毛が付着しているのを見つけました。科捜研に相談すると「都内にある防虫・防鼠の専門会社の社長さんが日本の獣毛研究の第一人者だ」と言う。 「そんな人がいるんだ」と感心しつつ鑑定をお願いすると、「加工されたウサギの毛」と判明しました。マフラー等の衣料品に使われているものだろうという見立てでした。そして――出たんですよ、ウサギの毛が。ヤクザの恋人のジャンパーの襟元に使われていたのです。 覚醒剤を仕込んで密輸された額縁は2枚。いかにも中国っぽい水墨画だったと記憶していますが、やはりクオリティは低かったですね。科捜研に繋いでくれた千住署にいたベテランの鑑識さん、文房具メーカーの開発者さんに獣毛の第一人者と、人に助けられた事件でした。 人に助けられたと言えば――私が駆け出しのころ、覚醒剤160が隠してあった倉庫を見つけた話はしましたよね? 中国語を習得して国際捜査官となった私が、先輩刑事のヘルプとして喫茶店に潜入。上海マフィアの会話を隣のテーブルで聞いたことが摘発に繋がったのですが、そのときに逮捕したマフィアのボスがなかなか漢気のある人で。

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