教員による児童生徒の盗撮事件が相次ぎ、自治体が学校現場への私有スマートフォンの持ち込みを禁止する動きが広がっている。一方で、緊急連絡のため、通信機器の確保を求める声も上がる。 教員グループが女子児童の盗撮画像などをSNSのグループチャットで共有した事件の発覚から1年あまり。子どもの「安全」を確保するため、教育現場では模索が続く。 ◇盗撮疑いなどで計32回逮捕 昨年以降、名古屋市と東京都、神奈川県、北海道、岡山県の教員や元教員計7人が逮捕された。メンバーは盗撮行為や盗撮画像の共有のほか、女児の持ち物に体液を付着させた疑いなどで延べ32回、逮捕された。 チャット内では女児の着替えなどを盗撮した画像や動画のほか、女児の顔写真を使った生成AI(人工知能)の画像「性的ディープフェイク」も共有していたとされる。互いに「めっちゃいいですね」などとコメントをし合っていた。これまでに、うち6人が有罪判決を受けた。 事態を重くみた文部科学省は昨年7月、全国の都道府県・政令市の教育委員会に通知を出し、性暴力根絶に向けた対策として、研修の徹底や定期的な校内点検などを求めた。 ◇一歩踏み込み「持ち込み禁止」 通知から約2週間後、名古屋市は教員による教室へのスマートフォンの持ち込みや、私用のモバイル端末での子どもの撮影を禁止する新ルールの運用を始めた。通知では持ち込み禁止に触れていなかったが、一歩踏み込んだ。札幌市と北海道、横浜市も続いた。 横浜市は以前から「私用の情報機器は原則業務で使わない」とのルールがあったが、新たにガイドラインを策定し「持ち込んではならない」と明記した。 ただ、札幌市の担当者は、スマホで撮った写真を添えてクラス通信にしていた教員らから「やりにくくなった」との声があると明かす。「子どもを守るためなので、『仕方ない』と理解してもらっている」という。 そうした中、自動体外式除細動器(AED)の普及啓発に取り組む日本AED財団は今年6月23日、「安易な通信機器の禁止措置は、子どもを守るという学校が負うべき重要な責任を形骸化させる恐れがある」として、通信手段の確保を求める緊急提言を発表した。 児童生徒が心停止した場合、教員らが現場から通報し、傷病者の状況やAEDの使用手順について消防の通信指令員から助言を得ることが救命につながると指摘する。 「1分1秒」が犠牲になることがないように、緊急連絡用の通信端末を教員に常時、所持させることを求める内容だ。 ◇インターホンやトランシーバーで対策 踏み込んだ盗撮対策を取る自治体は、これをどう捉えているのか。 名古屋市、横浜市では教室と職員室をつなぐインターホンを活用しているという。遠足などの校外活動や分散学習の際、名古屋市では学校が配布している公用携帯電話を持ち歩く。 公用携帯の数が行き渡らず足りない場合、私用端末は使えるが、カメラ機能がオフになるセキュリティーシールをスマホのレンズに貼る決まりだ。北海道では、校長判断で例外的に私用スマホの持ち込みを認めている。 札幌市では「校長先生、来客の方がいらっしゃいました」「お母さんが忘れ物を届けに来ました」などと、校内での日常的な連絡ツールとしてトランシーバーを使うことが珍しくないという。担当者は「以前はスマホがなくても対応できたので問題はない」としている。【菊池真由、藤顕一郎】