茨城・古河老健殺人 7日判決 間接証拠 どう評価 被告は無罪主張 水戸地裁

茨城県古河市の介護老人保健施設で2020年、入所者2人に空気を注入し殺害したとして、殺人などの罪に問われた元職員で同市、赤間恵美被告(40)の裁判員裁判の判決が7日、水戸地裁で言い渡される。他殺かどうかの「事件性」と、被告が殺害したかどうかの「犯人性」が争点。検察側が無期懲役を求刑したのに対し、被告は起訴内容を否認し一貫して無罪を主張した。犯行を裏付ける決定的な証拠がない中、検察が積み上げた多数の間接証拠をどう評価するかが焦点だ。 ■54回の公判 起訴状によると、被告は同市の老健施設「けやきの舎(いえ)」で、同年5月30日に鈴木喜作さん=当時(84)=に、同7月6日に吉田節次さん=同(76)=に、いずれも点滴用チューブにシリンジ(注射筒)をつないで空気を注入し、空気塞栓(そくせん)による急性循環不全で殺害したとされる。 公判で主な争点となったのは、事件性と犯人性の2点。論点が多岐にわたったことから、昨年12月10日に始まった公判は全54回に及び、公判回数は水戸地裁で行われた裁判員裁判で過去最多となる。 ■他殺か否か 検察側は事件性について、コンピューター断層撮影(CT)画像や司法解剖の結果から、2人の体内に空気の存在が認められ、注入できるのは静脈につながっていた点滴ルートしかないと説明。2人とも急死するほどの身体の不調はなく「空気塞栓以外の原因で死亡した現実的可能性はない」と主張する。 一方の弁護側は、心不全などの病気で死亡した疑いが残り「死因は何ら証明されていない」と反論。鈴木さんが当初病死とされ司法解剖されなかったことや、吉田さんの体内に残っていた気体量が致死量を下回ることなどを挙げ、「想像を巡らせて殺人事件にすることは許されない」と訴えている。 ■黙秘を貫く もう一つの争点は犯人性。検察側は、特殊な手口であり「看護師の犯行の可能性が高い」とする。同僚の証言を根拠に、看護師だった被告以外に犯行時間帯に鈴木さんの部屋に入った人物はおらず、吉田さんのベッド脇で被告がシリンジを動かす様子を職員が目撃したと主張している。 吉田さんの死亡3日後に施設の仮眠室で見つかったシリンジに、被告のDNA型と整合するものが付着していた点も強調。被告はロッカー内にもシリンジを所持し、その理由についてうそをついた点などを挙げ「被告が犯人と十分推認できる」としている。 弁護側は、犯行状況に関する同僚の証言は変遷があり、信用できないとする。被告がシリンジを動かしていたとする目撃証言も「シリンジを点滴に接続していたというものではなく、殺人の実行行為は証明されていない」と反論している。 また、被告の行動確認のため県警が逮捕前に実施したカメラ捜査についても「任意捜査の限界を超えており違法だ」と批判し、被告のごみから採取したDNA型を証拠から排除するよう求めている。 被告は殺人罪の審理で黙秘を貫き、被告人質問は行われなかった。 被告は21年11月、スーパーで牛肉など計5000円相当を万引したとして窃盗罪にも問われ、起訴内容を認め「クレプトマニア(窃盗症)を治して更生し、社会に帰りたい」と述べた。

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