ミステリアスな謎の男や事件を追い続ける刑事など、頼もしさとクールさを併せ持つ独特な雰囲気を持つソン・ソックが、今度は42歳差の恋愛に挑戦する。 Netflixにて配信されるドラマ『君は天国でも美しい』は、80歳で三途の川を渡ったヘスク(キム・へジャ)が先に亡くなった夫ナクジュン(ソン・ソック)と天国で再会するというラブロマンス。天国では自分の好きな年齢で生きることができるが、ヘスクはナクジュンが一番綺麗だと言ってくれた80歳の姿でいることを決意する。ところがナクジュンは30代の姿を選んでおり、思わぬ年の差恋愛が始まることになる。 ソン・ソックの今までのイメージとは異なるコミカルな演技と、キム・へジャとのポップな掛け合いに期待が高まる中、本記事では次々と新たなスタイルを見せてくれるソン・ソックの近年の出演作をご紹介しよう。 ●『私の解放日誌』 やはりドラマ『私の解放日誌』で“ソン・ソック沼”にハマった人も多いだろう。彼を語る上で本作は外せない。田舎町から毎日ソウルに片道1時間以上かけて出勤する兄、姉、そして主人公のミジョン(キム・ジウォン)が抱える悶々とした心の葛藤を穏やかに描く本作で、ソン・ソックは3兄妹の父親の元で働く謎の男“ク氏”を演じている。 ク氏は、まるで芸術作品のように焼酎の空き瓶を部屋中に敷き詰めるほどアルコールに依存していた。彼も重いものを背負っているのだと気づいたミジョンは、お互いに敬い合うことを提案する。2人が友情や恋愛を超えた関係になっていく姿は、観ている自分も安心させてくれるものがあった。関心がないように装いながらも、ちょうど良い距離感で気にかけてくれる、ク氏のような存在がいたらどれだけ喜びを感じられるだろうか。素性のわからないミステリアスな雰囲気と飾らない服装が色気も醸し出していて、このソン・ソックに虜になった人も多いはずだ。 ●『カジノ』 フィリピンでカジノを経営し、金と権力を手に入れた男ムシク(チェ・ミンシク)。ドラマ『カジノ』冒頭では、彼が殺人容疑で逮捕される。いかにして今の立場に至ったのか、そしてなぜ権力がありながら逮捕されることになったのか。シーズン1の前半ではムシクの生い立ちが描かれ、シーズン1の後半からは韓国の警察庁から派遣されてきた、ソン・ソック演じるスンフンがフィリピンに降り立ち、現地の韓国人たちが殺された事件を追っていくことになる。 捜査の中で浮かび上がったムシクの存在。スンフンはムシクを絶対に捕まえるのだと、動機なく執着しているように見えるが、あくまで警察官として事件の真相を追っている。彼の「いつか誰かの誇りとなりながら暮らしたい」という言葉には、警官としてではなく一人の人間としての心の内が表れていた。一見何を考えているのかわからないように見えるが、現地警官との友情も含め、とても人間らしい心の持ち主だ。ソン・ソックは前髪を上げた強面な役柄が多い印象だが、本作では前髪を下ろしており、少し柔らかさのある姿が新鮮に映る。 また、フィリピンが舞台であるため当然英語が飛び交うが、ソン・ソックはアメリカとカナダで暮らした経験があるため、英語には違和感ゼロ。他のキャストの英語も非常に流暢だ。韓国語の台詞と同じくらい英語の台詞も多く、異国情緒あふれる雰囲気も相まって、各キャストの新たな一面も見ることができる。 ●『殺人者のパラドックス』 思わず人を殺してしまったことをきっかけに、殺人のループにハマっていく主人公タン(チェ・ウシク)を描いた『殺人者のパラドックス』。本作でソン・ソックが演じるのは、タンを追う刑事チャン・ナンガムだ。殺人を犯しておきながら無計画であり、後々証拠を残してしまったことに焦るタンだったが、なぜかその証拠は消え去っており、犯人として追跡されることはなかった。 しかしナンガムは、タンの挙動を不審に思い、証拠がないながらも彼のことを追い続ける。物語は基本的にタン目線で描かれるため、やたらと勘が鋭いナンガムがタンを問い詰めるシーンには嫌悪感を抱いた人も多いのではないだろうか。本来は警察を応援するだろうが、チェ・ウシクとソン・ソックの演技力によってそれが逆転してしまうのが面白い。一方、ナンガムと家族との関係性が明かされることで、。ただの冷淡な警察ではなく『カジノ』同様に信念を持った、人間味のある人物であることも色濃く映し出されていく。 ●『犯罪都市 THE ROUNDUP』 先述のような悪を必死に追い続ける公務員役も似合っていたが、映画『犯罪都市』の2作目である『犯罪都市 THE ROUNDUP』で演じた“最狂”の悪役も迫力があった。 本作でソン・ソックが演じたのは、ベトナムで韓国人を狙ってお金を巻き上げる悪党・ヘサン。冒頭では、お金持ちの息子を人質に父親から金をむしり取ろうとして、その息子を残虐に殺害する。上半身には広範囲にタトゥーが入っており、落ち着いた佇まいが凄みを醸し出している。 仕事でベトナムに来ていたマ・ソクト(マ・ドンソク)に追い詰められ、殺害した息子の父親が仕向けた殺し屋にも追われるヘサンは、怒りに任せて韓国に渡り、その父親を捕らえて身代金を要求するも、やはりソクトから逃れることはできない。殺し屋やソクトと対峙した時のアクションや、一瞬のためらいもなく人を無惨に殺す時の表情は狂気に満ちている一方で、負けそうでも必死に威嚇するなど、強さと弱さが見え隠れするキャラクターを演じ切った。 ●『コメント部隊』 2025年2月に日本公開された映画『コメント部隊』では、大企業の不正を暴こうとする社会部記者のサンジンを演じたソン・ソック。SNSが発達した現代では、誰もが自由に自分の意見を述べることが出来るが、その反面、フェイク情報も潜んでいる可能性がある。そこに目をつけたのが本作だ。 企業の不正を告発したサンジンは、誤報として炎上し休職を余儀なくされてしまう。するとしばらくして、とある若者からネットで世論を操作する“コメント部隊”なるものがあることを聞かされ、探っていくと根深い闇が存在することを目の当たりにする。 しかしその情報も本当か嘘かわからない……。闇の中で踊らされる焦りと記者としての正義感は、ソン・ソックが出演してきた多くの作品と通じる部分がある。観終わった後には、サンジンと同じく「もう何も信じられない」という気持ちにもなるはず。それだけ感情移入できてしまう作品でもあり、今まで見たことのないほど翻弄されるソン・ソックの姿を目の当たりにできる作品だ。