Andrew Hay Nate Raymond [25日 ロイター] – トランプ政権による移民取り締まり強化を受け、米国の大学は留学生に対し、米国外への渡航を控えるよう助言したり、学位課程を修了するための支援を行っている。 米国では親パレスチナ派の抗議活動に関与した学生たちが移民当局に逮捕され、その後、軽微な違反や逮捕歴を理由に、数千人の留学生が国外退去の対象とされた。 これに対し、大学側は留学生たちに、弁護士を雇い、法的異議申し立て中も授業に参加し続けるよう密かに助言しているという。ロイターが取材した20人以上の学生、移民弁護士、大学関係者が証言した。 この戦略は、ひとまず功を奏しているようだ。米政権は25日、3月下旬以降に取り消された留学生のビザを回復すると発表した。 「米国大学協会(AAU)」によると、現在、同国には過去最多となる約110万人の留学生がおり、彼らは昨年、米国経済に440億ドル(約6兆6000億円)の恩恵をもたらしている。 経済だけではない。マサチューセッツ工科大学(MIT)のサリー・コーンブルース学長は、「MITは誇り高き米国の大学であるが、海外から来た学生や研究者がいなければ、我々は著しく力を失う」と指摘する。 <インド人留学生に打撃> 米国国際教育研究所(IIE)によれば、米国に在籍する留学生の半数以上はインドと中国出身だ。 3月下旬以降、移民・税関執行局(ICE)は、ビザ保持者の情報を管理する「学生・交流訪問者情報システム(SEVIS)」から4700人以上の学生の記録を削除した。犯罪活動を理由とする場合が多かったと、米移民弁護士協会(AILA)は述べている。 AILAが327件の事例を分析した調査では、削除された記録のうち、ほぼ半数がインド人留学生であり、多くが「オプショナル・プラクティカル・トレーニング(OPT)」と呼ばれる就業経験プログラムに参加していたことが明らかになった。 国土安全保障省(DHS)のマクローリン次官補は、SEVIS登録を取り消された学生に対し、米国から退去するよう促した。 「不法滞在者は逮捕、国外退去となり、二度と米国に戻れない」とマクローリン氏は声明で警告した。 SEVIS登録取消の撤回発表後、DHSはロイターからの取材要請に応じなかった。 ロイターの集計によれば、SEVISから削除された学生のうち200人以上が、政府による措置を一時的に差し止める裁判所命令を勝ち取った。 大学側は、SEVIS登録を取り消されたフルタイム学生に対し、弁護士を雇うよう伝えた。ある主要大学の外国人学生担当官は匿名を条件に、「登録取消に異議を申し立てた学生たちは、授業への出席が認められている」と語った。 ニューヨークの移民弁護士クレイ・グリーンバーグ氏も、「私が話を聞いた限りでは、多くの大学が学生の受講継続を認めている」と述べる。同氏はSEVIS登録取消に直面した学生たちの代理人を務めている。 バージニア州のジョージ・メイソン大学は、学生に対し、履修完了に向けてアドバイザーと相談するよう呼びかけた。カリフォルニア大学も、教育継続のための手段を模索していると、広報のレイチェル・ザエンツ氏が明らかにした。 夏季休暇を間近に控え、デューク大学は最近、留学生に対し、秋に再入国できない可能性を懸念して、米国外への渡航を控えるよう呼びかけた。 <留学生に広がる不安と「自主退去」> 親パレスチナ派の学生が連邦当局に逮捕される映像が全国で取り上げられた後、留学生たちはスピード違反や指紋採取をされるといった些細な理由でも強制退去されることを恐れていると、南西部の大学院に通うコンピューターサイエンス専攻のインド人学生は語った。 中には自ら米国を離れる選択をする学生もいる。 コーネル大学で親パレスチナ派抗議活動を主導したモマドゥ・タール氏は、移民当局への出頭命令を受け、3月に出国した。 英国とガンビアの二重国籍を持つタール氏は「リモートで学業を続ける予定だ」と述べ、英国で学位取得を目指す意向を示した。 ジョージア州のインド人留学生は、飲酒運転の罪で起訴された記録があったために法的地位を失ったと述べた。ただし、この起訴は後に取り下げられたという。 学生は、「大学は受講の継続を認めてくれた」と語り、常に注意して行動していると語った。 「なんらかの制服の人を見かけたらすぐに引き返すようにしている」と、彼は身元を明かさないことを条件に述べた。