川崎市の住宅で行方不明の女性の遺体が見つかり、元交際相手の男が逮捕された事件。女性の家族らが「適切な捜査がされていない」などと訴えていることについて、神奈川県警は「必要な措置を講じてきた」とし、家族らが主張するストーカー被害については「相談を受けた認識はない」としています。神奈川県警が説明した当時の対応は以下の通りです。 ーーーーーーーーーーーー 2024年6月13日 岡崎さんから「彼氏とけんかになった」旨の通報受けて警察官が対応。現場に駆けつけた警察官が事情聴取した結果、岡崎さんは「帰りが遅くなったことから彼氏とトラブルになった。彼(白井容疑者)とは別れようと思う」と言ったことから岡崎さんの祖母宅に避難させた。 7月5日 岡崎さんにその後の状況を警察官が確認したところ、「実は警察が来た3日後によりを戻しました。しかし再度トラブルとなり別れる事を決意した。3日前に彼氏が荷物を持ってきてくれた。以降トラブルはない」とのことだった。2人が親族などを交えて話し合いをした結果、別れることとなり自体も沈静化していたことから取り扱いを終える。 9月20日 岡崎さんの父親から「娘が元彼(白井容疑者)から暴力を受けた」旨の通報受けて警察官が対応。岡崎さんに事情聴取をしたところ「きのうの夕方、元彼から殴られ蹴られナイフ様のもので脅された」と説明があり被害届けを受理。 10月29日 白井容疑者と復縁していた岡崎さんが9月20日の出来事について「『友人と会うために自転車で出かけたところ元彼(白井容疑者)と鉢合わせになりました。そして元彼に近くの公園まで連れて行かれてそこで顎を蹴られたり頭を殴られたりしました』と祖母にいったら父親に話が伝わり父親が通報した。」と話していたが、このことを「大げさに話をしていた」として被害届けを取り下げる。また、白井容疑者と別れる旨を言っていたがその後も岡崎さんと白井容疑者の間で交際関係が継続し、警察としては2人と話をし、またそれぞれの家族と話をするなど岡崎さんの意向も確認しながら必要な措置を講じる。 10月30日 岡崎さんの姉から「誰かに家に入られたみたいだ。おそらく妹の彼氏」という旨の110番通報。岡崎さんから事情聴取したところ、「姉宅に在宅中、元交際相手から無理矢理連れ出された」と説明。一方、後日岡崎さんと白井容疑者の交際が継続している事が判明。関係を絶っている状態、元交際相手と連絡を取っていないと説明されていたが、実際は2人は会っていて別れていたはずが復縁していた。しかし2人とも別れる旨の申し立てがあった。これまでにトラブルを繰り返したり再び交際するなどがあったため警察は不定期ではあるが連絡をとり、状況を確認する措置をとる。 11月5日 「元彼から暴力を受けた」旨の岡崎さんからの一般通報があり対応。ただし岡崎さんは駆けつけた警察官には「白井容疑者から暴力はなかった」旨の説明をする。一方で白井容疑者が岡崎さんの姉宅の家の前で待ち伏せしていたことから岡崎さんの要望を受けて白井容疑者に口頭注意を行い、母親に引き渡し監護を依頼。 11月10日 岡崎さんの父親から「娘がいなくなった。元交際相手と一緒にいるのではないか」との通報を受け対応するが、岡崎さんの父親は「行方不明の届け出は出すつもりはない」との意思表示をする。その後、岡崎さんと白井容疑者が一緒にいることが判明。2人から事情聴取し、復縁していたことがわかる。 11月22日 10日の通報について父親に連絡して岡崎さんらが復縁していることを伝える。別れたり復縁したりを繰り返していたため、その後トラブルにならないように指導を行った上で取り扱いを終える。 岡崎さんが警察署へ行方不明になる前にした「9回の電話」。 1回目の電話 12月9日午後6:35 岡崎さんが川崎臨港警察署に「白井容疑者が家の周りをうろついている。白井容疑者に(こちらから)連絡をした方がいいか」と連絡があった。署は白井容疑者に直接連絡しないなどの指導を行う。さらに白井容疑者に警察から注意する為、岡崎さんに「事実確認をするために警察署に来て欲しい」といったが「また連絡します」と電話が切れる。 2回目の電話 12月9日午後7:07 同じ内容で連絡があり、同じように白井容疑者への注意のため警察署に来るよう伝える。岡崎さんは「今は白井容疑者に話さなくていいです。警察署にも行きません。」と電話を終える。 3回目の電話 12月10日午前5:06 「白井容疑者に自転車を盗まれたので返して欲しくて電話したが電話に出ない。白井容疑者の家の前にいる」という内容の連絡。電話を受けた警察官は2回目の電話があったときの警察官と岡崎さんとのやりとりを聞いていて、岡崎さんが白井容疑者と接触することによるトラブルを防ぐため、その場を離れるよう伝える。また警察官から折り返し電話をさせる旨を伝える。その後、警察官が再度岡崎さんに電話したところ岡崎さんは「白井容疑者を自転車を盗んだことで逮捕して欲しい」と言う。警察官は「今すぐには逮捕できない。事件にするためにも警察署で事実関係を聞きたい。被害届けを提出してもらう必要がある」旨を伝えると共に、白井容疑者に会ったり連絡しないよう指導する。岡崎さんは「もういいです」といって電話を終える。 4回目の電話 12月11日午後0時49分 記録が残っておらず詳細不明。通話時間2分半。昼の時間帯もあって警察署の代表電話で受けた。自転車の盗難に関する内容であったのではないかと考えられる。 5回目の電話 12月12日午前4時14分 「白井容疑者が自宅付近をうろうろしているので怖い、自宅周辺をパトロールしてほしい」という内容。電話を受け現場に警察官を派遣して白井容疑者がいれば職務質問する旨を説明。自宅から出ないことなどの指導をする。その後パトカーによる白井容疑者の捜索や警戒をしたが白井容疑者など不審者を発見できなかった。その結果を岡崎さんに連絡。 6回目の電話 12月16日午後2時7分 12月16日に自転車が盗まれたことの被害届けを受理しているため、このことに関しての電話だと思われるが記録が残っておらず詳細不明。 7回目の電話 12月19日午前10時10分 川崎臨港警察署地域課で16日に受理した自転車が盗まれたことの被害届けに誤りがあり、警察官から連絡したことの折り返し。訂正の必要性を説明し対応可能な日時場所の調整を行い警察官が被害者の自宅付近に行って書類の訂正を行う。 8回目の電話 12月19日午後9時52分 岡崎さんの対応をしたことがある川崎臨港警察署生活安全課のA警察官が出勤しているか確認する内容の電話。A警察官は不在で緊急の要件だという話もなかったため日中時間帯に改めて電話してほしい旨を伝える。 9回目の電話 12月20日午前7時10分 前日と同様にA警察官が出勤しているか確認する内容の電話。これに対して電話を受けた警察官が出勤状況を確認したところ不在であったため午前8時30分以降に再度電話して欲しいと依頼。岡崎さんは「時間をおいて連絡します」といって電話終える。 12月20日 岡崎さんのSNSのアカウントから同居している祖母宛に「少し出かけてくる」などのメッセージがあって以降、岡崎さんが行方不明になる。 12月22日 岡崎さんの祖母から「自宅のガラスが割られている」旨の通報があり、警察官が駆けつけたところ、岡崎さんが帰宅しないとの申告があり、祖母が「白井容疑者の家に行っているかもしれない」と話したため警察官はただちに白井容疑者の家に行き、白井容疑者の自宅を確認、事情聴取を行う。割られた窓の錠が施錠されていたこと、窓ガラスの破片が内側から外側に飛んでいることから「室内側から割られている可能性もあります」と話している。鑑識活動として写真撮影行う。指紋採取は最終的に1月7日に再度現場へ行ったときに実施している。 12月23日 川崎臨港警察署に来た岡崎さんの父親から行方不明届けを提出したい旨がありこれを受理。同じ日に岡崎さんが同居していた祖母宅、白井容疑者の自宅などの確認を行う。 警察はそれ以降も被害者の知人からの聴取、被害者の携帯電話の位置情報の確認、被害者が立ち寄った場所の捜索、元交際相手からの聴取などを含む捜索活動を実施。 2025年1月6日 岡崎さんの父親から「白井容疑者から娘(岡崎さん)に殺すぞというようなメールが来ていた」と連絡を受ける。1月10日に白井容疑者に事情聴取を行ったときに白井容疑者の携帯電話を確認したがメールは確認できなかった。 4月に入り白井容疑者の所在がわからなくなる。 4月22日 ストーカー規制法違反で捜索差し押さえ許可状を請求。 4月30日 白井容疑者の自宅を捜索、床下収納からボストンバッグを発見。 5月1日 川崎臨港警察署でボストンバックの中身を確認。遺体発見。 ーーーーーーーーーーーー 神奈川県警は当時の対応を説明した上で、「必要な措置を講じてきた」としました。 また、白井容疑者に対し岡崎さんが行方不明になった後、任意で7回聴取を行っていたことも明らかにしています。 岡崎さんの家族らが警察に「ストーカー被害を訴えていた」と主張している事については、「相談を受けた認識はない」として、岡崎さんの意向では警察による対応を望んでいないと判断し、ストーカー規制法上の「警告」の対応はしていないと説明しました。 一方、岡崎さんが行方不明になっておよそ4か月経ってから白井容疑者の自宅を捜索したことについては、岡崎さんの行方不明後に行った白井容疑者への任意聴取の中で「この日に家に行った」という話があり、ストーカー規制法違反で捜索差し押さえ令状を請求できると判断したと説明。 今回の対応についてどのように評価しているか問われると「重大な事案と認識している」としつつ、「今後の捜査により、一連の経緯も含め事案の全容を明らかにしていく。これを通じてさらに改善すべき点があるかどうかについて確認していきたい」と明確な回答は避けました。