2012年神奈川県逗子市で起きた、当時33歳の女性が元交際相手の男に殺害された「逗子ストーカー殺人事件」。嫌がらせメールなどの脅迫容疑で男は逮捕されるが、警察官が逮捕状執行の際に読み上げた情報から「被害者の住まい」「結婚後の名字」を知り犯行におよんだ。 捜査1課長としてこの事件の捜査を指揮した元神奈川県警の鳴海達之氏は「連携の悪さ」はあったとして、110番通報で事件を知ったという鳴海氏は「現場に行った捜査一課の課員から、どうも夫婦の関係じゃないという話を聞いて、どんな関係なのかというのがまったくわからなくて、当時の逗子の署員から『実はストーカーの相談を受けていたんです』という話をあとで聞いた」と明かした。 また「そういう話がまったく刑事部に上がってきていない。連携がとれていない。こんな事件があってから初めて知るというのはあってはいけないこと」とコメントした。 逮捕状執行については「その後捜査を進めていったなかで、逮捕状に氏名とかいまの住所を書いてあったのを読み上げたという風に言われているが、当時は法務手続きとしてそうしなさいと刑事訴訟法には明記されている部分で、そこを変更して何かするということは当時はできなかった」と釈明。しかし「それでも人の命を守るために何ができるんだろうと考えていかなければいけないと、本当に考えさせられた事件だった」と語った。 現在では被害者の情報が表に出ることはないと語る鳴海氏は、「当時は刑事訴訟法の手続きに則って、逮捕状には犯罪事実というのがくっついているから『なぜあなたが逮捕されるのか』という理由が書いてあるわけで、その理由を読み上げるのが手続きのなかにあった。その手続きを履行していったが、それが裏目に出てしまった」と振り返り、「それ以降はそんなことをしないように、検察庁とも裁判所ともいろいろ話をして、対策上進めていったという結果になって現在に至っている」と解説した。 痛ましい事件によって生まれたストーカー規制法は、その後も事件の問題点に合わせて改正されてきており、2012年の逗子ストーカー殺人事件のあとには規制対象を「メールの連続送信」に拡大、また2016年に起きた小金井ストーカー殺人未遂事件のあとには規制対象を「SNS」に拡大している。 (『ABEMA的ニュースショー』より)