社説:学校の安全対策 地域の見守り生かして

子どもたちをいかに守るか。地域に向けて学校を閉ざさず、協力の中で安全を図りたい。 東京都立川市の市立小に男2人が侵入して暴れ、制止しようとした教職員5人がけがを負った。 児童に危害が及ばなかったとはいえ、安心して過ごせるはずの学校生活が脅かされたことは重い。再発防止に向けて検証し、全国の学校でも危機管理体制の再確認が求められよう。 2人は、児童間のトラブルを巡って、担任との面談が物別れとなった母親が連れてきたという。正門脇にある未施錠の通用口から入り、母親の子らの教室に侵入したほか、職員室の窓ガラスを割るなどし、現行犯逮捕された。 学校では昨夏、不審者侵入を想定した訓練をしていたが、保護者が複数の知人を呼び入れるケースは「想定を超えていた」という。現場対応の難しさが浮き彫りとなった。 文部科学省の2023年度調査によると、全国の小中高校の不審者侵入防止対策は、「防犯カメラ」と「玄関のインターホン」の設置がそれぞれ約6割を占めた。警備員を配置している学校は1割弱で、基本的に不審者への対応を教職員が担っている。 国や学校が安全対策を強化する転機となったのは、2001年の大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件だ。文科省は不審者が侵入した際の対応などをまとめた危機管理マニュアルを作成し、全学校に策定を義務付けた。 京都でも前後に日野小や宇治小での児童殺傷事件が起き、対策が進んだ。 だが、2年前にも埼玉県戸田市の市立中に刃物を持った高校生が侵入し、教職員を切りつける事件が起きている。 侵入を完全に防ぐのは難しい。学校は地域の拠点であり、災害避難所になっていることも多い。厳重に門戸を閉ざすばかりでは外部の目が届かず、隔たりを生みかねない。地域と連携し、住民に見守られることで安全性を高めていく工夫が必要だろう。 学校でもあらゆる想定を考え、危険を減らす対策や訓練を積み重ねる努力が欠かせない。 保護者対応も課題である。 親からの相談トラブルやクレームは、先生を孤立させず、組織的に向き合うべきだ。教員OBや教育委員会、法律の専門家らがサポートし、家族と学校の間に入って解決につなげるといった体制を整えたい。

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