「私はヤっちゃう方だった」「もう別次元の快楽」“14歳の少女”は、覚醒剤に狂う母の後を追って自身も薬物の沼に溺れていった…「ヤクザの子」が振り返る怒涛の半生

〈「あー、またキマってるんだ」中学時代から“薬物中毒”だった母は、警察にマークされた末に独特の「覚醒剤の販売法」を編み出し…“ヤクザの子”が振り返る衝撃人生〉 から続く 国家から「反社会的組織」と定義されている暴力団。その構成員や準構成員の家族、とりわけ子どもはどのような人生を過ごし、大人になっていくのか。『 ヤクザの子 』(石井 光太著、新潮社)から一部抜粋し、小学生時代に母が覚醒剤の密売で逮捕された一恵のケースをお届けする。なお、登場する証言者やその関係者は、身に危険が及ぶことを考慮して全て仮名にしている。(全3回の2回目/ 1回目を読む / 2回目を読む ) ◆◆◆ 美奈子は執行猶予を受けていたことから、実刑が下された。母親が刑務所に収監されたことで、一恵は妹とともに離婚した父親の実家に預けられた。児童養護施設に行かせるよりはいいという判断だったようだ。 実家には祖父母が暮らしていたが、父親の紀夫は相変わらず遊び歩いてばかりで帰ってこなかった。そのぶん、祖母には、自分が親代わりとなって厳しく育てなければならないという思いが強かったらしい。それまでまったくしつけがされていなかった一恵の生活態度を嘆き、食事作法から言葉の使い方、それに勉強までを厳しく教え込もうとした。 一恵にとって、それは煙たいだけだった。母親といた時は好き勝手できたのに、実家に来た途端に口を酸っぱくして叱られ、同じことを何度も指導される。一恵は祖母と顔を合わせるのが嫌になり、放課後は公園やコンビニの前でたむろする年上のグループとつるむようになった。 そんな子供たちの中には、中学生の不良も混ざっていた。彼らにしてみれば、小学生の一恵は妹のような存在だったにちがいない。夜になると、近所の歓楽街に連れ出すこともあった。初めて歓楽街のネオンを見た途端、一恵は心を奪われた。まるでおとぎの国に迷い込んだかのような気持ちで夢見心地になった。 ──この世に、こんなきれいな街があるなんて。ここで生きていきたい! 夜の街に魅了されたのだ。この日から毎日、一恵は年上の先輩にねだり、歓楽街へ連れて行ってもらった。

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