国の天然記念物のムラサキオカヤドカリなど数千匹を無許可で所持したとして鹿児島県警奄美署が7日に中国籍の男3人を逮捕した文化財保護法違反事件。3人は奄美大島で約1週間かけて、約5200匹を素手で捕獲して回っていたことが分かった。「カリカリカリ」─。スーツケースから聞こえる異音に気が付いたホテルスタッフの機転で、詰め込まれていたオカヤドカリが島外に運び出される事態が防がれた。 ■捕獲や流通は沖縄の特定の業者だけ オカヤドカリは東京都小笠原村や沖縄県などに生息し、個体数の減少のため昭和45年に天然記念物に指定された。 今回中国人の男3人は4月下旬、関西国際空港から空路で奄美大島に入り、5月6日、スーツケース6個に分けて約160キロのオカヤドカリを持ち出そうとした。捕獲などには文化庁長官の許可が必要で、流通なども沖縄県の専門業者に限られている。 事件が発覚した経緯は、3人が宿泊したホテルビッグマリン奄美(奄美市)のスタッフが環境省に連絡したことだった。 ■「カーテンレールの上にヤドカリ」 6日朝、ホテルをチェックアウトした男2人は同日夜のフェリーで鹿児島港に向かうといい、スーツケース3個を一時的にフロントに預けた。ケースからは機械音ではない音が聞こえたという。 異変もあった。男らは延泊したため宿泊部屋を変えており、前夜男らが泊まった部屋に宿泊した別の客から「カーテンレールの上にヤドカリがいる」と連絡があった。オカヤドカリを巡っては、沖縄県で外国人による密漁事件が相次いで報じられていた。 「お客さまの荷物を開けるわけにはいかない。しかし、ヤドカリだと大変なことになる…」 スタッフは知り合いの環境省職員に連絡。市立奄美博物館の学芸員や警察官が駆け付け、男2人がホテルに戻ってからケースを開封。小分けにされた洗濯ネットに大小のオカヤドカリがぎゅうぎゅうに詰められていた。もう一人の男は市内の別の場所で見つかった。 ■「そろそろ繁殖の時期なのに」