5日に広島市中区の川土手で男性(55)が殺害され、母親(80)が逮捕された事件。 その背景には「アルコール依存症」をめぐる家族の悩みがあったとみられています。「アルコール依存症」に悩む人が孤立しないようにするためにはどうしたらよいのか。専門家や同じ悩みを抱える人の証言から考えます。 日常生活でも身近なアルコール。生活に潤いを与えてくれる一方で、健康面でのリスクも少なくありません。 そもそも、なぜ依存症に陥ってしまうのでしょうか。アルコール依存症に詳しい「よこがわ駅前クリニック」の加賀谷有行医師は「脳内の報酬系という神経回路が暴走することが原因。アルコールは快楽をもたらすので、その快楽を求めてアルコールをずっと摂取し続ける脳の回路になってしまうことが依存症のメカニズム」と話します。 依存症は「患者の意思が弱い」ではなく、脳がアルコールを求める状態。そのため、自力でコントロールすることは難しいといいます。 お酒によって記憶がなくなってしまう記憶障害。飲んでいる時のことを忘れる急性的な作用に加え、慢性的な作用もあります。加賀谷医師によりますと、脳の神経の栄養(ビタミンB1)が不足することによって生じる記憶障害と、脳の中の海馬の神経細胞がアルコールによって死滅してしまう「アルコール性認知症」の2種類があり、アルコール性認知症は、認知症の中でも比較的早く発症することが知られているということです。 また、加賀谷医師は「アルコール依存症は患者だけでなく、その家族にとっても悩みや孤立は計り知れない」と話します。 家族が重症のうつ病、あるいはうつ状態になって自殺や無理心中を企てることもあるので、家族も遠慮せず、相談しに行くことが大切だということです。 ■「どこに相談すれば…」悩んだときの2つの窓口 加賀谷医師によりますと、「男性の1% 女性の0.1%がアルコール依存症」というデータもあるといいます。これを広島県に当てはめると「県内で約1万2千人がアルコール依存症」ということになります。しかし、実際に通院などの措置を取れているのはごく一部だということです。