平和の国、日本。しかし、昭和の日本は戦前・戦後を問わず世間を揺るがすテロ事件が数多く起きていた。例えば1937年、皇居や国会に「死のう!」と叫ぶ男たちが現れ、突如割腹を試み始めた「死のう団事件」はその一つだ。『 日本を震撼させた昭和のテロ事件 』(宝島SUGOI文庫)より一部抜粋し、お届けする。(全3回の1回目/ 2回目を読む / 3回目を読む ) ◆◆◆ 1937(昭和12)年2月17日の午後、東京都内の数カ所で、「死のう!」と叫んで割腹を試みる人間が次々に現れた。他人に危害を加えたわけではないが、彼らの異常行為は世間を驚かせた。 死のう団と呼ばれた彼らの正体は、江川桜堂という人物が率いる「日蓮会殉教衆青年党」と名のる宗教グループで、過去に弾圧を受けてきた。邪教と蔑まれてきた社会へのうらみと警察への復讐のために行動したという。 この日の割腹事件では実際に死んだ人間はいない。しかし、事件を起こす以前に取り調べに当たっていた特高警察が、自責の念から割腹自殺をしている。