入札改革、積極的な発言なく…長崎・佐々町長選の告示まで1週間 三つどもえぼやける争点

長崎県北松佐々町発注の公共工事の入札を巡る官製談合事件で逮捕、起訴された古庄剛前町長(78)の辞職に伴う出直し町長選の告示(10日)が1週間後に迫った。いまだ事件が町政に暗い影を落とす中、立候補を予定する3人からは、入札不正の再発防止策や制度再構築への積極的な発言は聞こえてこない。町民の中には「あれだけの事件が起きたのに、争点にもなっていない」とぼやきの声も漏れる。 出馬について「考えていない」と繰り返していた前副町長の中村義治氏(66)。古庄氏の逮捕直後から職務代理者を務めていたが、5月9日に電撃辞職し、30日夜には立ち見が出るほどの決起集会を開いた。 決意表明は文章を読み上げながら20分以上に及んだが、入札制度に触れたのは「住民、関係者に疑念を抱かれないよう、さらに改善に向け取り組む」といった発言のみ。公約には「契約担当部署の新設」を掲げるが、具体的な入札改革には最後まで触れなかった。中村氏は古庄氏の“最側近”として長年、入札の指名審査委員長も務めた人物。町議の中には「積極的に改革すると言えないのでは」との見方も広がる。 激しい選挙戦を見据え「部署の新設はそもそも私が進言していた」と中村氏をけん制しているのは、3月末まで町事業理事を務めた今道晋次氏(60)。「職員時代に提案していたが全く前に進まなかった」と語り、電子入札の導入や予定価格の入札前公表とランダム化、一般競争入札拡大などを訴えている。 ただ「入札制度は争点ではない」と語り、訴えの一丁目一番地には据えていない。「前町長が大型公共工事を進め、今後の行政運営は厳しい。新町長を選ぶ争点は実践力、実現力が伴う実行力があるかどうかだ」とし、事務所前でのつじ立ちなどを続ける。町議の1人はこうした姿勢に「本当に争点ではないと言っていいのか」と首をかしげる。 町議時代から入札制度の見直しを迫ってきたのは2度目の町長選に挑む浜野亘氏(69)。第三者が入札に目を光らせる入札監視委員会の開催などを訴えているが、今回は「強く言いすぎると変に伝わってしまう。どのくらいのトーンがいいのか難しい」とこぼす。 頭にあるのは4年前の町長選。条件付きの「最低制限価格の引き下げ」を訴えたが、有権者に真意がきちんと伝わらず、支持の広がりに欠けたと分析している。公約は防災対策や交流人口拡大など、中村、今道両氏と同じく列挙型。町の幹部職員と町議を経験した“二刀流”を訴えの武器にしているが、相手となる2氏も役場内では要職経験者で「結局は今後の選挙運動次第だろう」と町議の1人は情勢を眺めている。 町長選は、15日の投開票に向けて「三つどもえの大混戦になる」との見方が出ている。80代の男性町民は3人の公約パンフレットを眺めながら「五十歩百歩。誰が当選しても入札制度は大きく変わらないかも」と争点化できていない現状にため息をついた。

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