「待て!」「止まれ!」警察官が“寝落ち”で容疑者一時逃走…慌てて飛び出す警察官の様子

警察署から大勢の警察官が、一斉に飛び出してくる映像。「まるでドリフのコントみたい」と話題だ。取調中に容疑者が逃走し、慌てて追いかける瞬間を捉えたものだった。近隣住民は「『待て!』とか『止まれ!』とか騒いでいた」と証言する。 5月24日早朝、川崎署の交番に「覚醒剤を使用した」と自首してきた32歳の男を現行犯逮捕した。川崎署で取り調べを終え、留置所に連行されるまでの間、容疑者は取調室で待機していたが、隙を突いて取調室から逃走した。隙とは、見張り役の警察官の「居眠り」だった。 警察官は物音で目を覚ましたが、すでに容疑者の姿はなかった。警察官は「一瞬落ちてしまい、うたた寝をしてしまった」と話しているという。どれだけ眠かったのかは不明だが、取り調べる側が、寝落ちしてしまうことはあるのか。 元徳島県警捜査1課警部の秋山博康氏は、「自分から出頭してきたということは、逃げないだろうと油断があって、ウトウトしたのだろう」と推測する。「被疑者逃走となれば、署内放送で『被疑者逃走』と流れ、警察署内の警察官全員が出て、その犯人を発見する仕事になる」。防犯カメラの映像を見ると、少なくとも19人以上が飛び出し、行方を追っていた。 逃走した容疑者は、川崎署から200メートルほど先の路上で、取り押さえられ逮捕された。秋山氏によると、「刑事課の取調室は、刑事課の(建物に)入って奥にあったりする。取調室から勝手に逃げたら、刑事部屋を通らないと出られない。それが一つの基本的な建物の構造だ」という。しかしながら、「古い建物によっては、取調室から出たら廊下があり、廊下からすぐに階段を降りて玄関まで行けるような構造もあり得る」そうだ。 それにしても、逃走に気づかない「うたた寝」とは、どの程度だったのか。睡眠治療に25年間向き合ってきた阪野クリニックの阪野勝久院長は、「睡眠の脳波は、基本的にステージN1、N2、N3がある。N3が一番深い眠りで、なかなか起きない。気づかれずに犯人が逃げてしまったということなら、深い眠りに入ってしまったのかもしれない。N3かもしれないが、よっぽど疲労感もあったのだろう」と考察する。 とはいっても、容疑者と相対する緊迫する密室で、寝ることはあるのか。「緊迫感ある場面なので寝るとは、一般の人では考えにくい。ただ実際に起きてしまったということは、急激な眠気が来たと考えてもいい」(阪野院長)。 緊張感がある場面でも、眠気は襲ってくる。過去には、高知地裁で60代の裁判長が証人尋問中に居眠り、JRの運転士が運転中に居眠り。海外では、飛行機のパイロットが居眠りをして、目的地を50キロ近く通り過ぎたケースもある。また、落語家・立川談志の独演会を聞きに来ていた男性が、居眠りしていたとして主催者側に退席を求められ、訴訟に発展したこともあった。 メカニズムとして、「ある一定の睡眠時間を取らなかったなどで、睡眠負債がたまってしまうと、ああいう事例が起きる。脳が限界を超えて落ちてしまった感じだ」と、阪野氏は説明。「居眠り」は気のゆるみではなく、脳が限界を迎えた「防衛反応」だという。 秋山氏も現役時代に、経験があった。「まだ30代後半の時に、身代金目的の誘拐事件が起き、私が捜査を担当した」。犯人からの電話をもとに、張り込みや尾行捜査を行い、事件発生から4日目で犯人を逮捕。この時は、3日間にわたり徹夜だった。 そして「当然取り調べ中に供述を作るが、その調書の作成中に、3日寝なかったから体力も限界が来た。被疑者が取調室の机の前にいたにもかかわらず、寝てしまった」と振り返る。「被疑者が私の肩をポンポンとたたいて、『刑事さん、起きてください。早く調書取ってくれますか』。もし逃げられていれば、逃走罪が発生して、住民の不安を生む。こういう不祥事を警察が起こすと、国民・県民の信頼を回復するのは、相当時間がかかる」と語った。 (『ABEMA的ニュースショー』より)

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