米ロサンゼルスで続く不法移民摘発の抗議デモ参加者らと警察・州兵などとの衝突で、米国防総省は9日、連邦政府の対応強化のため海兵隊700人をロサンゼルス地域に動員すると発表した。連邦軍が国内の法執行に絡んで派遣されるのは極めて異例。同省はその後、カリフォルニア州の州兵2000人の追加派遣も発表した。連邦政府はすでに州兵2000人を派遣しており、同州政府はこれが合衆国憲法に違反するとして提訴した。 ピート・ヘグセス国防長官はソーシャルメディア「X」への投稿で、海兵隊700人をロサンゼルス地域に派遣中だと説明。ロサンゼルスの南にあるペンドルトン基地から派遣されるとした。 そして、「私たちには連邦政府の法執行職員を守る義務がある。たとえ(カリフォルニア州知事の)ギャヴィン・ニューサムがそうしなくてもだ」とした。 米軍(北方軍)は声明で、海兵隊は「ロサンゼルス大都市圏で連邦政府の職員や建物を」守っている人員と「よどみなく統合する」とした。 これに対しニューサム知事は「X」で、海兵隊員は「英雄」であり、「独裁的な大統領の狂った幻想を実現するために、米本土で派遣され、自国民と対峙(たいじ)させられるべきではない」と主張。「これは非アメリカ的だ」と訴えた。 ロサンゼルス市警察(LAPD)のジム・マクドネル本部長は記者会見で、ドナルド・トランプ大統領が「海兵隊をロサンゼルスに派遣するつもりでいる、あるいはすでに派遣した」と認識していると発言。派遣について「正式な通知」は受けていないとした。 本部長はまた、海兵隊の派遣により、警官らの動きが困難になったり、混乱が生じたりする恐れがあると主張。ロサンゼルス当局には、大規模集会への対応に関して「何十年もの」経験があると述べた。 ■州兵2000人を追加派遣 トランプ氏はすでに、カリフォルニアの州兵2000人をロサンゼルス地域に派遣している。 国防総省のショーン・パーネル報道官は9日、連邦政府がさらに州兵2000人を追加派遣すると説明。「移民関税捜査局(ICE)を支援し、連邦政府の法執行職員が安全に職務を遂行できるようにするのが目的だ」とした。 この発表に先立ち、カリフォルニア州のニューサム知事は「X」で、州兵増派の動きについて報告を受けているとし、「これは治安のためではない。危険な大統領の自尊心をくすぐるためのものだ」としていた。 ニューサム知事とロサンゼルス市のキャレン・バス市長(いずれも民主党)は、現在の事態は地元の警察で対処が可能だと主張。共和党のトランプ政権との政治的対立が鮮明になっている。 州兵の派遣についてトランプ氏は9日、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「カリフォルニアでの暴力的で扇動された暴動に対応するため、州兵を送るという偉大な決断をした」と主張。「そうしていなければ、ロサンゼルスは完全に消滅していただろう」とした。 ■州政府が連邦政府を提訴 これに対しカリフォルニア州政府は、自分たちの指揮下にある州兵を連邦政府が知事の承認なく派遣したとして、トランプ政権を提訴した。 カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官は声明で、州兵派遣は「現状にそぐわない、扇動的で状況を悪化させる行為」だと批判。「連邦政府の権限を超えている」とし、同権限について定めた憲法修正第10条に違反しているとした。 現在の抗議デモは、6日にロサンゼルス中心部で始まった。移民関税捜査局(ICE)が市内全域で不法移民の一斉摘発を進めていることが明らかになったのがきっかけだった。 LAPDは8日夜に「X」で、ロサンゼルス中心部の集会は違法と宣言されたとし、デモ参加者らに直ちに退去するよう呼びかけた。 抗議デモ4日目の9日も、連邦ビルの前などでデモ参加者らと警察が対峙した。警察は閃光(せんこう)弾を発砲するなどした。 抗議デモは、カリフォルニア州サンフランシスコでも起きている。市警察によると、8日夜には市内のいくつかの地域で、解散を拒否した60人を含む148人を逮捕した後、147人は釈放したという。 (英語記事 Trump sends another 2,000 National Guards and 700 Marines to LA on fourth day of unrest)