日大の重量挙げ部などが奨学生の部員から不正に金銭を徴収し、流用していた問題を巡り、警視庁捜査2課は10日、詐欺の疑いで、同部の元監督、難波謙二容疑者(63)を逮捕した。日大を巡っては、平成30年に発生したアメリカンフットボール部の悪質タックル問題以降、付属病院の建て替え計画を巡る背任事件や学生の違法薬物問題など不祥事が相次ぎ、新体制の構築が図られてきた。元重量挙げ部監督の周辺や同大OBからは、今も旧体制の〝影〟にとらわれ続ける組織の体質を問う声が上がる。 ■素朴な監督「どこで勘違いしたのか」 難波容疑者は昭和63年に同部コーチになり、平成12年4月に監督に就任。古くからの知人は「弱かった重量挙げ部を名門に育てた。人柄は非常に素朴な印象だった」とした上で、その変貌ぶりに「どこで勘違いしたのか」と困惑する。 捜査関係者によると、難波容疑者は、不正に得た徴収金の一部を、研究室のキャビネットで保管していたという。多くは私的に利用され、スーツや香水、バッグの購入のほか、愛車の車検やコーティング費用などに充てていたとされる。 高級な酒類も並ぶ研究室は「会社役員の応接室のような雰囲気だった」(日大関係者)。別の知人は「一緒に外食となれば、銀座、西麻布、赤坂の座っただけで1万円超はくだらない店ばかり。コーティングでビカビカに光らせたBMWも乗り回していた」と明かす。 ■体制刷新も不祥事のスパイラル抜け出せず 悪質タックル問題の後、日大は長年、トップに君臨してきた田中英寿元理事長(令和6年に死去)の不祥事などを受け、体制を刷新。4年、新理事長に作家の林真理子氏を迎えたが、翌年、アメフト部の違法薬物事件が再び影を落とした。 刷新では元理事長との「決別」を宣言したはずだったが、今回、逮捕された難波容疑者も〝田中派〟だったとされる。教員を経て運動部の監督になるなど元理事長との共通点もあり、その距離の近さから、周辺では「教員というより組織を動かす経営者」との印象を持っている者もいた。 トップが交代しても不祥事のスパイラルから脱却できない現状に、OBは嘆く。「メスを入れるところが違うのではないか」。(海野慎介)