「かんなみ新地」売買めぐり詐欺か、男逮捕 70年の幕下りた歓楽街

違法な風俗営業が長く疑われていた「かんなみ新地」(兵庫県尼崎市)の土地や建物の売買をめぐり6千万円をだまし取ったとして、県警尼崎南署は24日、同市大庄北4丁目の会社役員、前村光彦容疑者(50)を詐欺容疑で逮捕し、発表した。「だましとっていません」と容疑を否認しているという。 署によると、前村容疑者は2023年7月、県外に住む知人の会社経営の男性(51)に対し、6千万円の資金提供をすれば、かんなみ新地の土地や建物の名義人を男性に変更した上で市に売却し、1億1千万円の報酬を渡せる、などとうそを言い、3回にわたり、手渡しやネットバンキングで現金計6千万円をだましとった疑いがある。 この土地や建物は前村容疑者が所有しているものもあれば、所有していないものもあったという。 前村容疑者はこの事件とは別に、かんなみ新地の土地・建物売買に関して23年3~6月、尼崎市が作成したとする文書4通を偽造したなどとして、有印公文書偽造・同行使の罪で今月24日に神戸地検尼崎支部に起訴されていた。 市によると、かんなみ新地は、阪神尼崎駅と出屋敷駅の間にある、木造2、3階建ての長屋が並ぶ約680平方メートルのエリアを指していた。36店舗が飲食店の営業許可を得ていたが、違法風俗の営業をしている疑いが長く指摘されてきた。 21年11月、市は尼崎南署と連名で、店側に警告書を出した。実際には性的サービスの提供を目的としている疑いを指摘し、性風俗店の営業禁止区域であることから直ちに中止を求めた。店側は直後に営業を休止し、約70年続いた歓楽街に幕が下りた。 市はその後、まちの安全と再生を図ろうと、一帯の土地建物の取得に向けて動き出した。37区画を22人が所有していたことが分かり、22年6月から24年12月末までの間に36区画の21人と買収の契約を終えた。1区画以外はほぼ解体が終わっているという。土地建物取得や解体などを含む「旧かんなみ地域環境改善事業費」の決算累計額は約2億1630万円。 県警は、前村容疑者がこうした市の動きを利用した疑いがあるとみている。(根本快、中塚久美子)

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