「次はうちの店かも…」改正風営法初のガールズバー摘発に戦々恐々とする歌舞伎町の住人たち

改正風営法が施行された6月28日、新宿区・歌舞伎町のガールズバー『55LOUNGE』の経営者・八幡俊彦容疑者(35)が無許可で女性従業員に接待営業をさせていた風営法違反の容疑で逮捕された。改正風営法が施行後の摘発は全国で初となった。同店を含め、警視庁は30日までに計7店舗を摘発した。 同店は、客と従業員が長時間談笑するなどの接待行為が行われていたことや、カウンターの後ろに鏡が設置され、客から下着が見える仕組みがある内装だった。同店は6月中旬に無許可の接待営業について行政指導を受けていたにもかかわらず営業を続け、風営法改正による罰則強化についても説明を受けていた。 改正風営法では無許可営業等の罰則が強化されている。拘禁刑の年数が、2年以下から5年以下に。罰金は200万円以下から1000万円以下、法人である場合は200万円以下から3億円以下となった。 施行同日に行われたこの摘発は見せしめとの見方も強い。摘発について、夜の歌舞伎町住民からはさまざまな声が集まった。 ◆「何かしらの理由でやられるかも」 歌舞伎町のガールズバーで働いているMさんは「昼ごろにTikTokで知りました」と、摘発された店で働く友人にすぐに連絡をした。「なんであの店が……」と驚いている様子だ。 「ここは私の友達が働いていて、たまに遊びに行っていた店です。急に摘発が入るなんて思いませんでした。確かにスカート丈は短く下着が見えますが、お客さんもそれを楽しみにしていた店になります。でも、働いている女の子たちはそれを“わかって”いました。 無許可営業だったとは知りませんでしたが、言われているような接待営業を行っていたとは思いません。改正風営法が施行されたので、まずは夜の店が多い歌舞伎町で見せしめになったのだと思います」 同店で働いている友人とのLINEを見せてもらうと《ヤバい。給料どうしよう》、《店いつ復活するの?》といった生々しいやり取りがあった。また、改正された風営法で取り締まられる行為ではなくても、大なり小なりの後ろめたいことが気になっているようだ。 「私たちの店もそうですが、許可を取ってビラ配りや呼び込みをやっている店は多くありません。トー横あたりに立っているガールズバーやコンカフェの呼び込みの人たちは恐らく無許可がほとんどです。暗黙の了解で、区のセキュリティスタッフが近くで見回っているときには、しないって決めています。改正後にこうしてすぐに摘発が入ったって思うと、何かしらの理由で私たちの店もやられるかもって思ってしまいますね」(Mさん) 実際にトー横周辺で取材をすると「今後集客どうしようか」「もっと過激な店はあるのに……」との声があった。 ◆客層が悪くなるという懸念の声も 摘発のあった店舗の近くでガールズバーの呼び込みをしている男性A氏からも「見せしめじゃないっすか」との返答があった。しかし彼が懸念しているのは、「客層の悪化」になる。 「今回の件は運が悪かったと思っている経営者も多いと思います。ガールズバー界隈だと、気にしていない人が多い印象です。ただ、コンカフェとかになると、グレーな接客をしている店も多いので大変なのかもしれません。摘発があってすぐに店のインスタグラムアカウントに鍵をかけているところもあります。店内で何が行われているのかを外にバレないように工作しているんじゃないですか。そういう店は、摘発に怯えながら営業していると思いますよ」(A氏) 違法店を摘発するのは当然だが、客のモラルがこれによって変化するのだという。 「歌舞伎町には、変なお客さんがたくさんいます。妙に法律に詳しい人や、ニュースをまめにチェックしている人たちはかなり厄介です。キャストがお客さんに少しでも触れたら『今触ったから風営法違反!』だとか『一瞬でも隣に座ったから通報』と、女性キャストたちの困っている顔を楽しむような輩です。これだけならまだいいですが、法を語って難癖をつけて『安くしろ』なんて言い出す始末です。今後、こうした客が増えると思うと対応をするスタッフがかわいそうですね」 改正風営法は、夜職の人たちにとってはかなり大きな変化になりそうだ。過渡期には見せしめとしての摘発が続く可能性がある。ガールズバーやコンカフェはこの変化の中、生き残っていけるのだろうか。 取材・文・写真:白紙緑

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