岡山県の古民家に保険金目的で放火したとして火災保険の調査に長年携わっていた保険調査員らが逮捕・起訴された事件に絡み、損害保険大手4社がこの調査員に委託した過去の保険調査について再調査を始めたことが1日、各社への取材で分かった。すでに「東京海上日動火災保険」(東京都)が再調査する方針を明らかにしていたが、ほか3社も同様の対応を決め、4大損保の足並みがそろった格好だ。 東京海上以外の3社はいずれも東京都に本社を置く、あいおいニッセイ同和損害保険▽三井住友海上火災保険▽損害保険ジャパン。 関係者によると、逮捕・起訴された東京都調布市の深町優将(まさのぶ)被告(53)は、保険各社が出資する調査会社最大手「損害保険リサーチ」(東京都)に令和5年春頃まで調査員として在籍。火災保険の調査を主に担い、「業界のエース」と呼ぶ声もあった。自身が実質経営する調査会社(東京)への移籍後を含め、4大損保からも多数の保険調査の依頼を受けた実績がある。 深町被告はほか3人と共謀し、5年10月に岡山県美咲町の古民家に放火し、共済金を詐取しようとしたとして岡山県警に今年4~5月に逮捕。その後、深町被告ら2人が非現住建造物等放火と詐欺未遂の罪で起訴された。 さらに6月25日には、5年11月に青森県つがる市の古民家に放火した疑いで、青森県警が深町被告ら4人を逮捕。放火の1年以上前に古民家を購入する手口は岡山と共通しており、県警は保険金目的の放火も視野に捜査する。 岡山の事件発覚後、損保各社は状況把握を進めていたとみられるが、事態を重く見た東京海上日動が他社に先駆け、深町被告が手掛けた過去の調査の報告書を見直すことを決定。深町被告らが保険金目的の放火を繰り返していた疑いが出ていることもあり、静観の構えだったほかの損保大手3社も追随した。 あいおいニッセイ同和損保はすでに、深町被告の独立後に委託した調査案件を特定し、内容について再調査を開始。損保リサーチ在籍時の案件については、同社から対象を特定したリストの提供を受け、確認を進めているという。 三井住友海上も損保リサーチからリストの提供を受けるなどし、対象の特定と再調査を同時に進めている。損保ジャパンはすでに対象案件の特定をほぼ終え、再調査に専念するとしている。