「どこまでツイてねえんだよ…」売上800万円を従業員が持ち逃げ!不幸の連続にため息しか出ない【マンガ】

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営について解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第18回では、かつてあったスタートアップの横領事件について解説する。 ● 「品質はいいが価格が高い」がウケないワケ 格闘技イベント「豪腕」の会場で自分たちがデザインしたTシャツを販売する主人公・花岡拳とその仲間たち。だが豪腕のファンたちは、「品質はいいが、価格が高い」として、一度手に取ったTシャツを買わずに通り過ぎていく。 しかし、花岡が会場に来た真の目的はTシャツを販売することではなかった。イベントに出入りする広告代理店の社員にTシャツを認知させ、自分たちのビジネスを拡大することにあったのだ。 業界関係者との名刺交換を続ける花岡。それを見た一ツ橋物産の井川泰子は、「(グッズを取り仕切る)私を足場にして商売の幅を広げようとしてる」と怒りの言葉を漏らす。一方で、花岡に対してあきれたように言うのだった。 「あいつ甘いわ、ここにいる担当者のことまるでわかっていない」 井川の言葉どおり、代理店の担当者たちは品質で勝負する花岡たちのTシャツには目もくれず、安価な中国製のグッズにしか興味がないと言い放つのだった。 それを遠目に見た井川は「だいたい毎年決まったパターンを繰り返すだけの業界、新しいことにチャレンジしようなんて気持ち、誰も持っちゃいないわ」とつぶやくのだった。 ● 業界を揺るがせた「33億円横領事件」 代理店担当者の冷めた反応をみた花岡は、彼ら・彼女らを振り返らせるための大きな仕掛けの必要性を感じたのだが、そんなことを考える余裕もなく、また大きなトラブルに襲われる。 井川からの発注が相次いだことで資金不足に陥った花岡たちは、入金されたばかりの売上金の800万円を事業資金に回そうとする。しかし経理担当の菅原雅弘が800万円の現金を置いたまま離席した隙に、“小池のじいさん”こと小池定吉が、現金を持ち逃げしてしまうのだった。 さすがに社内に置きっぱなしにしていた現金を持ち逃げした事例は聞いたことがないが、実際に新興企業でも社内での「カネ」にまつわるトラブルは、メディアに報じられないものも含めて少なくないと聞く。 ​​ 今でも記憶に新しいのは、画像解析AIを手がけるエルピクセルの事件だろう。 東京大学発のスタートアップである同社の経理を担当していた元取締役が、2020年に業務上横領の疑いで逮捕された。被害額はなんと約33億円。 エルピクセルはこの一件で、ベンチャーキャピタルや大手事業会社から調達した資金の大半を消失することになった。結果として、その後の事業やイグジットの計画についても、大きな変更を余儀なくされた。 新興企業では、人材不足から管理部門の業務に割けるリソースは限られており、個人に依存した状況になりがちだ。しかし申請と承認のフローを分ける、通報や監視を強化するなど、できるところからでもガバナンスを整えなければならない。 トラブルに次ぐトラブルで苦しむ花岡たち。だが次回、ある社員の「趣味」が逆転のチャンスを生むことになる。

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