女子児童を盗撮した画像や動画を共有した疑いで、複数の小学校教諭が逮捕された事件の波紋が広がり続けている。逮捕された中には「承認欲求」を口にしている者もいるようだが、人間の底知れぬ欲望が何乗にもなって表出したこの事件は、計り知れないほど深刻な課題を我々に突きつけた。 「今回のことは徹底した真相究明と共に、教員の採用問題や適性が根本から問われる由々しき事態です」 こう話すのは危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏。 「SNSは、人が『他者よりも優位に立ちたい』という欲求を満たすのに最適といえます。匿名性が高いものも多く虚実が暴かれにくいため、悪事を働くための格好の場となりがちです」 総務省によれば、日本のソーシャルメディア利用者数は2023年には約1億580万人に達した。特に身近な「LINE」の利用率は10代から50代全ての年代で90%を超えているといい、トラブルや犯罪は決して他人事ではない。 「画像・動画が送られてきた時などは決して拡散させず、場合によっては、専門的な機関(警察、違法・有害情報センター等)に相談する必要がある」と平塚氏。 「たとえ一方的に送られてきたとしても、転送や拡散はしないようにしましょう。内容によっては犯罪に当たります」 今回取材に応じてくれたのは、ある50代の女性。息子さんが高校生だった当時巻き込まれた「動画」をめぐる騒動について、内容を編集することを条件に教えてもらった。 「問題は、息子さんの部活動のLINEグループで起きました。その中で『彼女がいる、いない』という会話が展開された際、ある男子生徒が「彼女の存在」を仲間に告白。 しかし、イジられキャラだったというこの生徒は、周りから『ほんとかよ』とからかわれ、その後、交際相手との行為を収めた動画をLINE上に共有しました。女性の息子は、それを見て『マズい』と感じたのです」 動画を転送・拡散した生徒も中にはいたそうだが、この息子さんの「初動」により、早い段階で学校や弁護士などが介入することとなった。 「息子さんは、グループの人数が多かったこともあり、自分が通告したことを特定される可能性は低いと見て、警察に匿名相談を行いました。 この息子さんの初動を後押ししたのが、日頃の家庭での教育。万が一SNSなどで画像等を共有されても、むやみに開いたり『いいね』を押したりしてはいけない、という親からの頻繁な声かけです。学校でもこのような授業はありますが、親のフォローも重要です」 と平塚氏。犯罪に巻き込まれそうになった時や誰かが被害に遭っているのを知った時、匿名で相談できる警察の窓口等があるという。 「特に若者の場合、冷静な対処ができる人ばかりではないはず。実際この事例で、ある男子生徒は別の友人に動画を見せた上、映っていた女子生徒に直接『部室であんなことするなんて、勇気あるな』と揶揄したといいます」 動画は無断で撮影された様子で、画面が真っ暗になって音声のみが流れる部分と映像が交錯していたそうだ。この出来事は部の存続が問われるほどの大問題に発展し、複数名の生徒が処分を受けたという。 取材を受けた女性はこう述べる。 「盗撮された生徒さんは無事に卒業されたそうですが、当時はやはり噂が広がってしまいました。ウチの息子の初動は正しかったと思います。やはり、最初の判断でその後の明暗が分かれますよね」 【関連記事】「あの娘って有名だよね」保護者間で起きた「もうひとつの拡散」とは?、では、動画流出の全容と、保護者たちの暴走についてレポートしている。 【聞き手・文・編集】佐原みすず PHOTO:Getty Images【出典】総務省情報通信政策研究所:令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 総務省:情報通信分野の現状と課題 ※18歳未満の性的な写真・動画の製造・提供・所持は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反となるおそれがあります(総務省ほか:インターネットトラブル事例集より)