中国・北京市で拘束され、スパイ罪で起訴されたアステラス製薬の日本人男性社員に対し、同市の第2中級人民法院(地裁)は16日午前、判決を言い渡す。中国側は「スパイ活動に関与した」と主張しているが、具体的な起訴内容は明らかにされておらず、中国でビジネスに関わる邦人の間で不安が広がっている。 公判は日本メディアには公開されず、在中国日本大使館の職員が傍聴し、量刑などを公表する予定。有罪判決が出れば、改善基調にある日中関係に影響を与えるのは必至だ。 男性社員は、同社の現地法人で幹部を務めたベテラン駐在員。2023年3月、帰国直前に拘束され、同年10月に正式に逮捕された。その後、24年8月にスパイ罪で起訴され、同年11月に初公判が開かれた。 石破茂首相は24年11月、ペルーでの習近平国家主席との首脳会談で、男性社員を含め拘束されている邦人の釈放を求めた。今月10日にマレーシアで行われた日中外相会談でも、岩屋毅外相が王毅外相に同様の要求を行うなど、日本政府は再三にわたり男性社員の早期釈放を求めてきた。 「国家安全」を重視する習指導部は14年に反スパイ法を施行し、23年には同法を改正。従来の「国家機密」に加え、「国家の安全と利益に関わる文書やデータ、資料、物品」の提供や窃取などに処罰対象を拡大した。【北京・畠山哲郎】