ストーカーや痴漢、通り魔に強盗。世の中には凶悪な犯罪に手を染めてしまう人間がいるが、予期せぬ危険から身を守るためにはどうしたらいいか。42年間凶悪犯と渡り合った「リーゼント刑事」こと秋山博康さんは「本当に危険な人間ほど見た目が『普通』なことが多い。疑うべきは『外見』ではなく『行動』である」という――。 ※本稿は、秋山博康『元刑事が国民全員に伝えたい シン・防犯対策図鑑』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。 ■もしも不審者に遭遇したら… マスクにサングラス、黒い服にコート姿……「不審者」と聞くとそんなイメージを思い浮かべるかもしれんな。 たしかに見るからにあやしいヤツもいる。しかし誰から見ても「あいつ、あやしい」と思われるような格好をしていたら、すぐに通報されてしまう。つまり、犯人にとっては「作戦失敗」ちゅうことや。 ほんまに危ない不審者は、見た目が「普通」のことが多いんや。子どもを狙うヤツほど、「あやしいオジサン」やなくて、「やさしそうなお兄さん」を演じとる。また、不審者のあやしさは、外見ではなく、「行動」に出る。たとえば、子どもばかり見ていたり、声をかけたりするヤツは要注意。そんな人物を見かけたら、ためらわず警察に知らせてほしい。 もしも子どもが不審者につけられたら、とにかく全力で逃げて、近くの大人に助けを求める。それを家庭で繰り返し伝えておいてほしいんや。交番が近くにあれば警察官がおるし、なければコンビニでもええ。道を歩いてる大人でもかまわん。 「助けて!」って大声で言えば、きっと誰かが動いてくれるはずや。大事なのは、「撃退」しようとせず、すぐに逃げて周りに頼ること。 ■トイレに行く時は要注意 「不審者情報」は警察や自治体のホームページでも公表されている。親御さんには、ぜひこまめにチェックしてほしいと思う。犯罪にはかならず予兆があるんや。 地域の見守りパトロールをすることも、犯罪の芽を未然に摘むことにつながるはずや。さて、性犯罪の温床になりやすい場所といえば、「トイレ」や。 昔、ワシが担当した事件でこんなことがあった。小学6年生の男の子が駅のトイレで知らない男に声をかけられ、個室に引きずり込まれた挙げ句、性被害に遭った。犯人はすぐに捕まって、その子にもさいわいケガはなかった。しかし、彼は心に深い傷を負い、しばらく学校に行けなくなってしまった。 犯人はトイレの個室に隠れて、ターゲットが来るのを「今か今か」と待っていることもある。そんな危険を回避するためにもぜひ、公衆トイレは子どもひとりで行かせないでほしいんや。 もし、どうしてもひとりで行かざるをえないときは、できるだけ「入口に近い個室」を使わせてほしい。理由は簡単や。奥のほうの個室やと、万が一「助けて!」と叫んでも、外に聞こえにくい。 それと、「明るくてキレイなトイレ」、清掃員や利用者の出入りがある場所を選ぶことも安全につながる。