７月６日、自ら制作した「検証番組」を放送したフジテレビ。中居正広氏（52）の女性A子さんとのトラブルに端を発した騒動について、港浩一元社長や大多亮元専務ら関係者を取材している。 ただ、番組は第三者委員会の発表以上のものはなかったというのが正直な印象だ。 特に関心をもって観ていたのが、中居氏とA子さんとのトラブルの情報をコンプライアンス室にも上げずに“隠蔽”したのは、レギュラー番組をその後も放送した中居氏を守るためだったのかという点。１月に行われたフジの謝罪会見でもその点を港氏に質問したが、 「中居氏を守ろうという思いはなかった」 と回答。検証番組でも同じように答えていた。 限られた情報共有された１人だった大多亮元専務も同番組で、 〈本当に（中居氏を守ること）そんなはない〉 としながらも、 〈そういうふうにとらえられ、見られても仕方がない〉 と、結果的に中居氏を守ったかたちになったことを認めている。 そこでフジテレビに対し、港氏と大多氏を提訴する方針に変わりがないか『FRIDAYデジタル』があらためて質問状を送ると 〈当社の監査役が、訴訟の準備に入っておりますが、その他詳細については回答を控えさせていただきます〉 との回答だった。 彼らの言うように、まったく“中居氏を守ること”を考えていなかったかといえば、大いに疑問が残る。法廷では、その点も明らかになるのか注視していきたい。 というのも、芸能記者として20年以上も仕事をしているが、テレビ局が旧ジャニーズ事務所にどれだけ忖度してきたかは身をもって体験している。ジャニー喜多川社長（’19年没）とメリー喜多川副社長（’21年没）が生きていた頃は、特にメディアへの情報統制が厳しかった。 経験したことでいえば、ワイドショーで芸能ニュースを解説した際、彼らの意に沿わない発言をしようものなら、すぐに番組のトップ、もしくは局の上層部に旧ジャニーズ側から連絡が入る。そして、番組サイドから“注意”されたことがたびたびあった。 週刊誌などでは普通に書かれていることでも、テレビでは言えないことは多い。とはいえ不思議と直接クレームを言われたことはないのだが……。 そんな旧ジャニーズとテレビ局の関係を近くで見てきたからこそ、独立したとはいえ、その後も事務所とは蜜月関係だった中居氏が、自局のアナウンサーとトラブルを起こしたとなれば、局の上層部がどれほど焦り、情報を隠蔽しようとしたのかは想像がつく。どんなに否定しようとも、それはA子さんを守るためでなく、中居氏のためだった可能性は高いと今も思っている。 そんな事務所の体質を如実に表したのが、’01年に道交法違反などの容疑で逮捕された稲垣吾郎（51）の事件だろう。 ◆旧ジャニーズからの“お願い”とテレビ局の忖度 当時、人気絶頂だった『SMAP』のメンバーだった稲垣が逮捕されると、通常ならば使われる“〇〇容疑者”という表記をせず、各メディアが「稲垣メンバー」という、聞きなれない表記をしたことが話題になった。そのウラには、旧ジャニーズ事務所から各メディアへ“強いお願い”があり、そこにマスコミ側の忖度があったのは有名な話だ。 「まあ、逮捕などの刑事事件はさすがに隠し切れませんが、“呼称”まで変えさせてしまうところにジャニーズの“凄み”があった。当然ながら、熱愛やハラスメント案件などはなかったことのようにされていましたからね。言っちゃ悪いですが、旧ジャニーズ事務所が元気だった頃なら、中居さんの件も国分さんの件も表沙汰にならなかったのではないですかね」（ワイドショー関係者） コンプライアンス違反により、無期限活動休止を発表した元『TOKIO』の国分太一（50）も、旧ジャニーズ事務所だった。 事の発端は６月20日に日本テレビがバラエティー番組『ザ！ 鉄腕！ DASH!!』からの降板を発表したこと。同社の福田博之社長は記者会見で、複数のコンプライアンス違反が確認できたことを明かした。 「東日本大震災で被災した福島県を応援するプロジェクトなどを行い、TOKIOというグループは何かと好感度が非常に高かった。その中でもMCを務められる国分さんは貴重な存在だった。そのうえ、彼は’15年に３歳年下のTBS社員と結婚。２人の娘を持つ温和なパパとして、世間のイメージは抜群だった」（広告代理店関係者） そんな彼が複数のコンプライアンス違反を犯し、活動休止を余儀なくされた。女性スタッフにわいせつな写真を送るよう強要した疑惑や、番組関係者に対するパワハラ疑惑が報じられるなど、文字どおり“裏の顔”が暴かれた格好だ。 ◆セクハラ、パワハラが一気に表面化したウラに メンバーも事務所も知らない旧ジャニーズタレントのコンプライアンス違反をテレビ局が自ら記者会見を開いて公にするなど、昔ならとても考えられない事態。だが、フジの失態を見て日テレが焦ったのも無理はない。 メディア対応に限ったことではなく、普段のテレビ局内から旧ジャニーズのタレントは特別だった。 「国民的グループに上りつめたSMAPや嵐なら分かりますが、デビュー前のJr.の子たちが番組に出演するときだって、スタッフの間には緊張感がありましたよ。 “ポッと出”の芸人さんなんかはスタッフに無茶苦茶にイジられますが、旧ジャニーズ事務所の子たちはデビュー前だって現場にマネージャーが付いてきて、テレビ局にニラみを利かせていた。そんな雰囲気を察してか、彼らも“自分たちは別格”という意識はあったはず。そりゃ、若いうちから芸能界で特別待遇されてきたんですから、勘違いしたまま過ごしてきても仕方ないでしょうね」（テレビ局関係者） 事務所の“過保護”の元、まさに芸能界の“ぬるま湯”に浸かって生きてきた旧ジャニーズ事務所のタレントたち。ここにきてセクハラ、パワハラ問題が一気に表明化してきたことは、ジャニーズ“解体”と無関係とはいえないだろう。 一般の社会人もここ数年はコンプライアンス意識を大幅にアップデートしている。旧ジャニタレは、その何倍、何十倍も“アプデ”しない限り、失敗した諸先輩方の二の舞になるだろう。もう“もみ消してくれる”後ろ盾はないのだ――。 取材・文：荒木田 範文（FRIDAYデジタル芸能デスク）