【ソウル聯合ニュース】韓国サムスングループ経営トップ、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子会長が、経営権継承を有利に進めるためグループ傘下企業の不当な合併を指示・承認したとして資本市場法違反などの罪に問われた裁判で、大法院(最高裁)は17日、李氏を無罪とする一審、二審の判決を支持する決定を下し、李氏の無罪が確定した。李氏は2016年に表面化した当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領が友人の崔順実(チェ・スンシル)氏に国政への不正介入を許した事件に絡み17年に贈賄容疑などで逮捕された。懲役2年6か月の実刑判決を受け服役し、21年に仮釈放された。今回の判決で約10年にわたり続いていた「司法リスク」を断ち切ることになった。 ただ、業績悪化などグループの危機や不透明な世界経済への対応、技術リーダーシップの回復、新たな成長エンジンの創出、グループ構造の再編など、難題が山積している。 李氏は幾重にも重なったサムスングループの難局を打開するために大規模なM&A(買収・合併)や投資、グループ革新を推進し「ニューサムスン」ビジョンを本格的に展開するものとみられる。 ◇足かせ外した李在鎔氏 眼前にある危機 李氏はサムスングループ傘下の第一毛織とサムスン物産の合併を巡り、最小の費用で経営権を安定的に継承し、自らのグループ支配力を強化するため不正な取引や株価操作、不正会計などに関与したとして、資本市場法違反や背任などの罪で2020年9月に起訴された。昨年2月の一審は李氏に無罪判決を言い渡し、今年2月の二審も無罪を言い渡した。起訴から無罪確定まで約4年10か月を要した。 朴槿恵政権下の2016年に明るみになった国政介入事件から数えれば約10年続いた司法リスクが解消した。これから李氏はグループの危機打開のため解決策の模索にまい進するものとみられる。 サムスン電子は李氏の行動に制約が生じてから、果敢な経営判断が適時になされず成長が止まったような「失われた10年」を経験している。 半導体事業では、受託製造(ファウンドリー)とシステムLSI(大規模集積回路)設計の部門の巨額赤字が続いている。圧倒的なリードを自負してきたメモリー部門は、人工知能(AI)の核心バリューチェーンになった広帯域メモリー(HBM)の開発で機を逸し、グローバルシェア1位も危うい状況だ。昨年7~9月期の業績発表後は、半導体事業を担うデバイスソリューション(DS)部門のトップが謝罪のメッセージを発表するほど異例の対応が取られ、技術競争力の弱化と会社の未来に対する危機感が高まった。 スマートフォン事業では米アップルにプレミアム市場の主導権を奪われ、中国メーカーの激しい追撃に苦しんでいる。30年近くグループの主力だった半導体とモバイルが危機の中で活路を見いだせず、サムスン電子の営業利益は23年は現代自動車、24年はSKハイニックスを下回り、2年連続で国内2位にとどまった。 米中の覇権争い、保護貿易主義の高まり、世界経済の低迷長期化などで経済環境がこれまでになく不透明になった。国内でも商法改正などによる企業の支配構造改善政策の副作用として、経営権が脅かされることを憂慮する声が高まっている。 ◇今後の投資とビッグディールに注目 このような状況で李氏が最も集中する事案は、グループの未来を決定する大規模な投資とM&A戦略であると予想される。 新成長エンジンを確保するためのビッグディールは2017年3月に自動車部品メーカーの米ハーマンを約9兆3000億ウォン(現在のレートで約9920億円)で買収して以来止まっているが、子会社化したハーマンを通じて今年4月に米医療器具メーカー、マシモのオーディオ事業部を買収したのに続き、5月にはドイツ大手空調メーカーのフレクトグループを買収。今月初めには、米デジタルヘルスケア企業、ゼルスの買収を発表した。 グループ内外では半導体やAI、バイオなど未来の新成長産業に対する果敢な投資決定が行われるか注目している。 また発足した新政権に合わせた大規模な投資計画を発表するかも注目される。 サムスングループは尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が発足した2022年5月に今後5年間、成長が見込まれる分野に450兆ウォンを投資すると発表している。新政権の政策基調を考慮し、新成長事業ビジョンに集中した投資計画を準備中との見方も出ている。 グローバルネットワークを強化し、新しいアイデアを得るための李氏の動きも活発になる可能性がある。 今年に入って李氏は2月に中国を訪問し習近平国家主席やグローバル企業のトップらと面会し、4月と5月には日本を相次いで訪問した。先ごろは、米国でメディア・IT(情報技術)業界の大物経営者らが集う「サンバレー会議」に出席し、AI分野の強化や新成長事業の創出の機会を模索した。 今月末にはイタリアのシチリア島で開かれる「グーグル・キャンプ」に出席し、新技術や世界の経済懸案などについて議論するとみられる。