【ワシントン=大内清】1970年代から90年代に連続爆弾テロで米国を震撼させたセオドア・カジンスキー元受刑者(2023年に死去)について、トランプ米大統領が、名門マサチューセッツ工科大学(MIT)で教授を務めた叔父ジョン・トランプ氏の「教え子だった」などと事実とかけ離れた主張を展開し、話題を集めている。 カジンスキー元受刑者は「ユナボマー」と呼ばれたテロリスト。名門ハーバード大とミシガン大で学んだ数学者だったが、過激な自然回帰思想に傾倒し、1978年から95年までの間に大学や航空会社などに小包爆弾を送り付ける連続爆弾テロを起こした。一連の事件では3人が死亡した。 トランプ氏は15日、東部ペンシルベニア州のエネルギー投資関連イベントでの演説で、「少し自慢話になるが」と前置きし、叔父のジョン氏が「MITの歴史で最も長く務めた教授」で「原子力と化学、数学の学位を持っていた」と説明。そのうえで、教え子にはカジンスキー元受刑者がいたと述べた。 米メディアのファクトチェックによると、ジョン氏は85年に死去するまでMITの准教授や教授、名誉教授を49年間務めたものの、同大の最長記録ではなく、専攻は電子工学だった。またカジンスキー元受刑者がMITに通った記録はなかった。 トランプ氏はさらに、ジョン氏に「彼(カジンスキー元受刑者)はどんな学生だったのか?」とたずねたところ、「とても優秀だった。他の学生の間違いを正して回っていた」と聞いたなどと主張。「天才と狂人は紙一重」だとも語った。 だが、連続テロ犯がカジンスキー元受刑者と明らかになったのは逮捕された96年のことで、85年に他界しているジョン氏が元受刑者のことを知っていたとの説明は作り話の可能性が高い。 レビット大統領報道官は17日の記者会見で、発言の真偽について回答を避け、「大統領は叔父を尊敬しているから」と述べるにとどめた。 トランプ氏は支持者集会での演説でしばしば、外国首脳との間で交わしたとする会話や真偽不明のエピソードを披露している。敗れた2020年大統領選では、根拠のない不正主張を繰り返した。