【プレイバック’05】〝性職者〟が学校を狩り場に…小・中・高わいせつ教師20年前のおぞましき実態

10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックをいまふたたびふり返る【プレイバック・フライデー】。今回は20年前の’05年7月15日号掲載の『総力取材 教え子に手を出した「おぞましい性職者」も61人! 全国小・中・高ワイセツ教師118人の罪状すべて暴く』を紹介する。 今年6月にも教師らによる盗撮グループが摘発されて小学校教師3人が逮捕されるなど、社会問題となっている教師によるわいせつ事件。今回振り返るのは、20年前の’05年、『FRIDAY』が独自に取材した公立学校教員のわいせつ行為による懲戒処分者の実態をまとめた記事だ(《》内の記述は過去記事より引用。年齢・肩書はすべて当時のもの)。 ◆118人が懲戒処分を受けていた 全国で増えていた〝性職者〟たち。’05年6月には長野県で酒に酔った中学校教諭(30代)が、すれ違った専門学校の女生徒(20代)の胸をわしづかみにして現行犯逮捕。愛媛県では高校教諭(40代)が女子中学生に「アルバイトをしないか」と声をかけ、立ち去ろうとすると腕を掴んだうえ、身体を触った疑いで逮捕された。 『FRIDAY』は、当時はまだ文科省が発表していなかった’04年度の公立学校(小・中・高)教員の「わいせつ行為などに係わる懲戒処分者」を47都道府県の教育委員会に取材。その結果、処分者の総数は118人に上り、自校の生徒(=教え子)に手を出した教員も半数以上の61名いることが判明した(※編集部注:その後の文科省はわいせつ行為による処分者は125名と発表)。処分内容の内訳は免職・解雇82名、停職25名、戒告4名、減給7名となっていた。 ただし、この数字は都道府県教委による処分のみで、政令指定都市の管轄校や私立学校は対象外だった。これらを合算すれば、この数字よりも遥かに多くなることは明らかだ。 また、懲戒処分は、免職(非常勤教師は解雇)、停職、戒告、減給となり、訓告や諭旨免職などは懲戒には含まれない。問題なのはこれらの処分の中で教員免許を失効するのは免職だけで、残りの処分を受けた場合は教員を続けられる。さらに、この当時は教員免許を失効しても、一定期間を過ぎれば別の教委で再試験を受けて教職に復帰することができた。このことについて、当時文部科学省に取材すると次のように回答していた。 《「『前歴』は処分を受けた教委に履歴は残りますが、基本的には自己申告です。他の都道府県の教員を辞めて別の教委で教師になろうと受験するときに、記載義務はありませんし、そういう欄もありません。ただ、ある程度は教委間で情報交換をしたほうがいいと思いますので、過去の履歴について教委間で共有できるように取り組むべく、これからお願いするところです」(文部科学省・初等中等教育企画課・教育公務員係)》 生徒や保護者はもちろん、学校にさえ〝前科〟が知らされることはなかったのだ。では、彼らはどのように生徒らを毒牙にかけたのか。その手口の一部を紹介する。 ◆《【神奈川県の中学校教諭(40代)免職】 数学担当で、生活指導を担当したこともある。スーパーの駐車場に止めた自分のワゴン車の中に教え子を迎え入れ、胸や下半身を触るなどの行為に耽った。直接的なわいせつ行為だけでなく、携帯電話で女生徒自身の卑猥な動画を撮影させて、メールで送らせたりもしていたという。「好きならできるだろ」などと女生徒の教師への好意を利用した悪質さだったが、’04年7月に「青少年保護育成条例違反容疑」で逮捕、起訴された。さらに別の女生徒2人に対する余罪も判明。再逮捕された。 ◆【静岡県の高校講師(20代)免職】 ’05年1月下旬、携帯電話のメールなどのやり取りから親しくなった女生徒と自宅で肉体関係を結んだが、交際継続を願う女生徒の思いを講師が拒絶。悩んだ生徒が別の教師に報告、発覚した。しかも、別の女生徒とも昨年4~6月、 車中やホテルで性的な関係を複数回持っていた。複数の女生徒を「食い物」にしていたのである。講師は「好意を持っていたことは分かっていた」と話した》 それ以外にも部活動でミスをした生徒に謝罪の意味で「キスをしろ」と迫った教師や、授業中にデジカメでスカートの中を盗撮した教師もいた。これだけやりたい放題の状態にもかかわらず、文科省の対応は後手に回っていた。’03年度の文科省の統計では155人がわいせつ行為によって処分されており、10年前の4倍近く増えているにもかかわらず、懲戒処分になる基準すらできていなかったのだ。 《「こういうことは『あってはいけない』というのが先です。いま、実際に処分を担当する各教委にお願いをしているのは、まずはワイセツ行為も含めて「こういうことをやったら懲戒処分の対象になる』という基準を作ってください、ということです。これが一種の抑止力になる」(前出の文部科学省・教育公務員係)》 「基準作り」はこの当時、全教委の約半数しかできていなかった。さらに、前述したとおり前歴を公開されることはなく、免職された教師も一定期間後に他の都道府県で復職することができた。わいせつ教師から子供を守る手立ては、日頃から注意深く観察するぐらいしかなかったのだ。 ◆制度は整いつつあるが… その後、各都道府県で体罰やわいせつ行為などの懲戒基準を整備する動きは進んだ。だが、文科省が’04年から各教委に対して指導していた「児童・生徒へのわいせつ行為について『原則懲戒免職』」という基準が全国的に実効性のあるルールとなったのは’20年9月になってようやくだった。 一方でわいせつ行為で処分される教員の数は増えている。ここ数年は200人台で推移していたが、’23年には320人と過去最多となった。うち子供へのわいせつ行為で処分されたのは157人だった。 増え続ける教師の性犯罪への対策として、’22年4月に「教員による性暴力防止法」が施行された。 同法では性暴力で免許を失効した教員はデータベース化される。再免許を申請した際に慎重な審査が行われるほか、再就職時にも学校側はデータベースを照会することが義務付けられており、教職への復帰のハードルは格段に上がった。 さらに’24年6月には「こども性暴力防止法」が成立。同法に盛り込まれた〝日本版DBS〟は学校や保育園以外にも認定を受けた塾やスポーツ教室など、子供と接する仕事に就く人に対して過去の性犯罪歴の確認を義務付けるもの。「性暴力防止法」では教員免許が失効した者しかデータベース化されないのに対して、性犯罪の前科すべて(刑の内容により期間は決められている)が照会されることになる。また、照会の対象は新規採用者だけでなく、現職の職員も含まれる。日本版DBSは’26年度中の施行が予定されている。 7月8日、阿部俊子文科大臣は、全国の私立学校を運営する学校法人のうち、75%が免職処分を受けた教員のデータベースを活用していなかったことを明らかにした。活用しなかった理由の多くは「活用が義務だと知らなかった」「システム自体を知らなかった」だったという。ようやく制度が整いつつあっても、使う当事者の意識はまだアップデートできていないようだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする