群馬県邑楽郡の町立中学校で学習支援員をしていた男性(69)による女子生徒への性加害を適正に通報しなかったとして、23日に中学の男性校長(59)を戒告の懲戒処分とした県教育委員会。事件後も職にとどまっている校長には1カ月ほどの研修を課し、町教委に対しても指導を行う方針だ。 この日の午前、被害に遭った生徒の母親は代理人弁護士とともに、県教委の担当者と面会。処分の内容を知らされた。 母親は取材に対し「被害者の思いに応えてくれた」とコメント。求めていた校長の解職はなかったが、母親は「懲戒処分を受けたことが重要。1カ月の研修で、今の時代に合った知識や教養を身につけてほしい」と話した。 事件は今年1月に発生。学習支援員だった男性が校内で2度にわたり、生徒の体を触るなどしたとして逮捕され、5月に不同意わいせつ罪で懲役2年6月、執行猶予4年の判決を受けて、確定した。 事件に加え、被害者を傷つけたのは、学校と町教委の対応だった。母親によると、校長は「受験期に騒がれても困る」「口外しないですよね」などと「口止め」し、県警への通報もしなかった。 母親は6月、校長の懲戒処分と校長職の解職、町教委への指導を求める意見書を県教委に提出。県教委は町教委に経過報告書の提出を求め、母親や校長らに聞き取り調査をした。その結果、校長の対応は「隠蔽には当たらない」としつつ、「口止めと受け取られても仕方ない」との認識を示した。 毎日新聞は4月1日の群馬県版で、事件と学校側の対応を報道。県教委の担当者は、懲戒処分を発表した記者会見で「校長の対応のまずさ、不備については、報道で知ることになった」と述べた。 母親によると、町教委からは4月以降、再発防止策の説明や謝罪の言葉はない。3月末、生徒の転校について町教委に相談すると入学の規定を示し「難しい」と繰り返すばかりだった。 学校が事件について保護者に説明したのは4月になってから。出席者によると、学校の説明は簡略的で、保護者らは再度の開催を求めたが「後は個別に」として応じず。そして「事件を拡散しないで」と保護者らに求めた。 母親は取材に対し「町教委は被害者家族の心情を理解していない。都合の悪いことは報告しない体質も変わらない。今回の県教委の発表を受け、町教委としての説明責任はあるのではないか」と話した。【湯浅聖一、加藤栄】