水戸京成百貨店雇調金詐取 元社長、無罪を主張 初公判 水戸地裁 茨城

水戸京成百貨店(茨城県水戸市泉町)を巡るコロナ禍での国の雇用調整助成金の詐取事件で、従業員の休業日数を水増しし助成金をだまし取ったとして詐欺罪に問われた元社長の千葉県柏市、無職、斎藤貢被告(67)の初公判が23日、水戸地裁(家入美香裁判長)で開かれ、斎藤被告は起訴内容について「雇調金詐取など絶対に行っていない。私は完全に無実です」と述べ、無罪を主張した。 一連の事件では当時の部下の元総務部長(59)も同罪で起訴され、同地裁が昨年10月に懲役3年の実刑判決を言い渡した。確定した判決は、斎藤被告との共謀を認定している。 起訴状によると、斎藤被告は元総務部長らと共謀し、社長在任中の2020年8月から21年5月までの間、従業員の休業日数を水増しした虚偽の申請書を茨城労働局に繰り返し提出し、雇調金計約6億7000万円をだまし取ったとされる。 検察側は冒頭陳述で、コロナ禍で売り上げの減少が見込まれたため、助成金の申請を決めたと説明。斎藤被告は総務部から勤怠データを改ざんしない方法を含む複数の申請パターンを示されたが、受け入れなかったとした。 その後、改ざんを問題視した元総務部長に対し、LINE(ライン)で「勤怠に誤りがあったとすれば修正すべきではないか」などと伝え、誤りを修正する建前で勤怠データの改ざんを指示したと主張。改めて確認された際も「それでやるしかないだろう」と言った、と指摘した。 弁護側は、生え抜きの役員だった元総務部長による「独断の犯行だった」と反論。経営状況を親会社に報告する立場で、赤字が続く切迫した状況が不正へと駆り立てたとし、別の上席役員に勤務データを修正することの了解を求めていた点にも触れた。 斎藤被告が元総務部長に送ったLINEの内容については、労使協定に反する休業補償割合の提案への叱責(しっせき)だったと説明。親会社からの出向で退任目前だった斎藤被告に「リスクを冒して不正を指示する理由はない」とした。 斎藤被告は24年1月に県警に逮捕されて以降、一貫して否認を続けてきたという。今年3月に保釈が認められ、この日の意見陳述では「部下と共謀したこともなければ、指示したことも一切ない」と述べ、起訴内容を否認した。 検察、弁護側双方に不正受給の事実関係に争いはなく、斎藤被告に故意と共謀が認められるかが争点となる。12月の第9回公判までに証人尋問や被告人質問などの証拠調べが行われる。 ■指示発言「疑念と怒り」 斎藤被告 水戸地裁210号法廷。水戸京成百貨店元社長の斎藤貢被告は黒のスーツに白いワイシャツ、青緑色のネクタイ姿に眼鏡を着用し、開廷1分前に足早に入廷した。公判が始まると、証言台の前で、はっきりした口調で受け答えした。 罪状認否では一貫して不正への関与を否定。検察側の冒頭陳述中、ノートにメモをしながら検察官の主張にじっと耳を傾けた。さらに意見陳述書を読み上げ、改めて無実を主張した。 茨城県大子町出身の斎藤被告。「地域に愛される企業を目指すとともに、従業員が楽しく働き、誇りを感じることができる会社に心がけた8年間」と振り返った。事件を巡り、「管理不行き届きであったこと、心より申し訳なく思う」と謝罪した。 退任後、突如逮捕された上、斎藤被告が不正を指示したと主張する元総務部長の発言に「言葉で言い表せないほど驚き、疑念を抱くとともに怒りが湧き上がってきた」と言及。1年以上の身柄拘束は耐え難かったが、「うそをつくことだけはできなかった」と語った。

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