「捕まらなければ、エンドレスで事件を起こしていた」。2025年6月に死刑が執行された白石隆浩・元死刑囚(34)が生前、記者に語った言葉だ。SNSで自殺をほのめかす人たちを狙い、相次いで9人を殺害した白石・元死刑囚は、死刑判決の日まで記者の面会に応じていた。犯行の動機やSNSを使った理由を、詳細に明かしていた。(本文中敬称略) ※前編・後編のうち前編 ■SNSで自殺志願者に「一緒に死のう」とウソ 2020年8月。立川拘置所(東京・立川市)の接見室に現れた白石は、両手を太ももにつけて深く頭を下げた。肩まで伸びた長髪が印象的だった。顔を上げると、緊張している記者の顔を一瞥し、「あなたは真面目そうだから、ちゃんと取材に答えますよ」と笑った。 「筋トレや写経をして過ごしている」と世間話に応じた白石は、当時29歳。どこにでもいるような若者で、凶悪な事件を起こした人物とは、とても思えなかった。 事件が発覚したのは、2017年10月。行方不明となっていた東京・八王子市の女性(当時23)の捜索で、神奈川県座間市にある白石の自宅アパートに警視庁の捜査員が踏み込んだ。部屋にあった複数のクーラーボックスから、9人分の頭部が見つかった。 犯行を認めた白石は、女子高校生を含む15歳から26歳の男女9人を殺害したなどとして、強盗強制性交殺人などの疑いで逮捕、起訴された。9人の殺害現場はすべて、白石の部屋。8月から10月までの、わずか2か月間の犯行だった。 事件が注目を集めたのは、被害者の多さだけでなく、その手口だ。 白石は、SNSで自殺をほのめかす書き込みをした女性たちに、「一緒に死のう」などとウソのメッセージを送って自宅に誘い込んでいた。女性には性的な暴行を加えて、殺害。金品を奪い、遺体は部屋の浴室で解体し、ごみとして捨てていた。 精神的に弱った人たちを食い物にした犯行は、社会に衝撃を与えた。 「白石はなぜ、9人を殺害したのか」。その答えを聞くため、白石との面会を続けた。